「今まで、私がやってきた仕事は何だったのか」。AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)に初めて触れたときの衝撃は、今でも忘れられません。ITベンダーとのシステム要件の打ち合わせに始まり、ケーブルやサーバーラックの設置、OSのインストール……。長い時間をかけて、ときにはサーバー室の寒さやファンの騒音に耐えながら進めていた作業が、マウスを操作するだけで済んでしまう。ネットワーク設定は自由自在、思った通りに設計を繰り返しできる楽しさもあり、自分専用のデータセンターを手に入れたかのような高揚感がありました。

 このように、私がAWSに興味を持ったのは2012年ごろ。当時は、「自社のデータを社外に置く」ことに対する抵抗感やセキュリティへの懸念などから、多くの企業がクラウド利用をためらっていました。そんな中、私がクラウドの利用をスタートできたのは、“偶然”でした。ちょうど、システム要件がクラウドの利用条件に合致し、トライアル利用にも理解のある社内ユーザーが現れたのです。そのユーザーの協力を受けながらAWSの利用を開始し、その魅力にとりつかれていきました。

 クラウドの有用性を、もっと社内に広めたい。そう考えましたが、事は簡単に運びませんでした。当時は私が所属するIT部門でも、クラウド利用を推進することに対して理解を示してくれる人はごくわずか。セキュリティへの不安などもあり、外部サービスの利用にまつわる社内の様々なルールも壁になりました。

 どうにか前に進めようと、他社の利用動向などについて自分で情報を集めてみました。ただ、十分な情報にはたどり着けませんでした。クラウドの利用開始から1年が経過しても思うように進展せず、自分のやりたいことを理解してもらえないもどかしさや、自分一人の力ではどうにもならないという無力感を感じ始めていました。

 情報収集する中で、クラウド系のコミュニティや勉強会の存在を知り、参加してみようかとも考えました。ただ当時の私には、高スキルのプログラマーやITベンダー所属の技術者など、“ガチンコ”なエンジニアばかりの集まりのように見えたのです。自分も社内システム構築に携わっていましたが、細かな業務はITベンダーの方にお願いすることが多く、「インフラエンジニア」を名乗るには知識も経験も不足していました。自分がそこに参加しても場違いになるだけではと感じ、一歩を踏み出せずにいました。

 そんな状況を打破するきっかけになったのは、またもや“偶然”の出来事でした。米ラスベガスで1年に1度開催されるAWSの大規模イベント、「re:Invent」でのことです。

コミュニティへの誤解に気づいた

 最新の情報を集めるために自社から派遣された私は、一人でラスベガスに向かいました。日本からはツアーもあったのですが私は自分で参加の手配をしたため、参加者の知り合いもAWSの社員数人程度しかおらず、初めてのイベントでどのように行動したらよいかもよく分からない状態でした。

AWSの年次イベント「re:Invent」。写真は2016年のもの
(撮影:井原 敏宏)
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 そんなときに偶然、夜、「Japan Night」という日本人同士の交流会が開かれることを耳にしました。そこに参加すれば、自分の抱えている悩みを共有できるのではないか。そう思い、飛び込みで交流会に参加したのです。

 するとその場で、たくさんのAWS先進ユーザーと知り合うことができました。そして、ユーザーコミュニティに対して抱いていた私のイメージが、必ずしも正しくなかったことが分かってきました。