平野:このメールからは、そうした山田さんの人柄のようなものが伝わってこない。少なくても明朗といった印象は受けないだろうね。

直井:そうなんです。明るくほがらかというよりは、ちょっとかたい印象を受けたんです。所長に言われて分かりました!難しい言葉を使っていることが問題ではなく、いつもと違うから違和感があったんですね。

平野:メールは、ビジネス文書とは異なる。どちらかというと電話(話し言葉)に近いコミュニケーションだ。ビジネス文書の謝罪なら、難しい言葉があっても違和感は少ない。しかし、メールの場合だとその人が話しているような感覚で読むだろう。そこで、普段使わない言葉があれば違和感も生まれる。

直井:確かに「本当にお詫びする気があるのかな?」って思っちゃいました。

平野:そこからこじれることもあるからね。

直井:そうか!だから「テンプレートを使うな」なんですね。

平野:私自身、テンプレートを使うことで業務効率を上げている。テンプレートを使うのが適しているのは、感情が不要なケースが多いんだ。たとえば、入金のお礼や打ち合わせ日時の確認。会社への交通経路を伝えるメールなどだね。これらは感情をこめる必要もないので定型文をそのまま使っている。

直井:確かに、所長が書くメールは機能的だなぁ~と思うこともあります。でも、ここぞというときは、絶妙な言い回しをしますよね。

平野:通常のコミュニケーションは、情報伝達の側面が強い。だから、誤解が生まれないように配慮している。普段の言い回しでそのまま伝える。しかし、ここぞというお願いをするときや謝罪するときは、言い回しを何度もチェックするし、自分の言葉になっているかは確認するね。

直井:謝罪メールって、月に1回くらいしか書きません。だから、ボキャブラリーが少ないからテンプレートに頼っちゃうんですよね。

平野:そもそもの話だが、自分に語彙力がないと思ったら電話で伝えたほうがいいよ。無理してメールで書こうとすると、どうしても違和感が生まれるものだ。私の場合、軽度な謝罪はメール、重度な謝罪は電話にしている。

直井:程度の重さで変えるのですね。ちなみに、軽度ってどのくらいですか?

平野:そうだね。添付ファイルの付け忘れ。日付の間違い。送ったメールにちょっとしたミスがあったときの再送。日程の変更。このあたりは、すべてメールだね。逆に、振り込みの間違い、メールの誤送信、これらはすべて電話にしている。

直井:確かに、添付ファイルの付け忘れでいきなり電話がきたら違和感がありますよね。あ!そっか。違和感が判断基準にもなるんですね。

平野:100人に聞いたら1~2人は、添付ファイルの付け忘れでも電話をすると答えるかもしれない。自分がマイノリティかどうかは判断できるようになりたいね。

直井研究員のひと言

テンプレートは、慎重に選びたいですね。私たちも『ビジネスメールの教科書』というウェブサイトで文章を公開しているので、定期的な点検が必要だと思っています。(by直井)

出典:日経 xTECH Active 2018年10月17日
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