フリーランスでiOSアプリのエンジニアとして活躍していた西方夏子氏。出産後もしばらくフリーランスで働いていたが、現在はマネーフォワードでサービス関連の部長としてサービス開発を統括している。会社にいる限られた時間で、できる限りメンバーの声を聞くことを心がけている。(聞き手は八木 玲子=日経 xTECH)

どんなお仕事をしていますか。

 当社の家計簿サービスの開発を統括しています。役職としては、サービス開発部とサービスデザイン部の部長を務めています。

 サービス開発部では、アプリとサーバーサイドのエンジニアが開発をしています。サービスデザイン部は、デザイナーや企画のメンバーがいて、どんなサービスを作り上げていくかを計画する部門です。部下は、合わせて15人ほど。直接の部下以外に、マーケティングの担当者ともコミュニケーションを取りながら仕事をしています。

 私の仕事の3分の1から半分は、メンバーのサポートです。週に1度、1対1のミーティングなども実施しています。残りは開発の進捗確認や、開発計画の立案などになります。

マネーフォワード PFMサービス開発本部 サービス開発部/サービスデザイン部 西方夏子部長
(撮影:菊池くらげ、以下同じ)
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 ただ、仕事はその都度変化します。例えば開発の計画を立ててリリースに向けて進んでいても、お客様から問い合わせがあったり不具合が起こったりしたらそれに対応する必要があります。このように、何かしらの問題が起こったときに何を優先するか、といった意思決定をしている日々です。どこで何が起きているか状況を把握した上で、それをすることで何が前に進むか、逆にやらないことでどんなリスクがあるかを俯瞰(ふかん)的に考える。その上で、意思決定をする。ほとんどがそうした仕事です。

いつからマネーフォワードで働いているのでしょう。

 入社は2016年です。その前は、フリーランスでiOSのアプリエンジニアをしていました。

 さらにその前からお話しすると、もともとはソニーに新卒で入社して、組み込みエンジニアをしていました。7年ほどたったころ、夫が海外転勤になり、退職してドイツについていきました。2年ほど、ドイツで専業主婦をしながらドイツ語の勉強などをしていましたが、2年もたつと徐々に何かしたいなと思い始めたのです。

 ちょうど米アップル(Apple)からiOS向けのSDK(ソフトウエア開発キット)がリリースされた頃で、それを使い始めました。最初は仕事というより、自分で何かを作りたいという欲求のままに手を付けました。

 始めてみて、組み込みソフトの開発に比べたらずいぶん楽だな、と感じました。メモリー管理1つとっても組み込みはすごく制限された世界ですが、それに比べたらいろいろとやりやすかった。組み込みはボードがないと開発できませんが、アプリならMacとiPhoneが1台ずつあればできるという、ハードルの低さも印象的でした。

 そこからのめり込んでいき、自分でローン計算のアプリを開発して、「App Store」で公開しました。日本で家を購入していたこともあって、自分が欲しいアプリを作ったのです。そうしたら、住宅メーカーや不動産業界の方などが使ってくださるようになって。そこから、仕事として取り組むようになりました。

 その頃、妊娠が分かりました。さらに、書いていた技術ブログがきっかけで出版社から声が掛かり、iOSアプリ開発の書籍執筆を始めました。現地で出産して、出版もして、日本に帰ってきました。

 帰国後も、3年ほどはフリーランスとして働きました。メインは書籍の執筆。自分のアプリ開発を継続しつつ、他のアプリのお手伝いもしていました。そして子供が幼稚園に入る前に、マネーフォワードに入社しました。

フリーランスから会社員に転身されたのは、どうしてですか。

 フリーランスは自由な立場ですが、全てにおいて「自己責任」がのしかかってきます。例えば書籍を執筆していて、締め切りが迫ってきているけれど、子供がインフルエンザにかかり、自分もインフルエンザにかかり……。それでも代わりは誰もおらず、預けることもできず、自分で全てやるしかない。結局、有給休暇がないわけです。休めば仕事は減る、という世界です。

 育児と仕事の切り替えにも悩みました。育児は育児でいろいろ壁があるし、仕事で行き詰まることもあります。私は自宅で仕事をしていたのですが、そうしたときに発散する場所がないというか、うまく気持ちを切り替えられずにいました。こうしたことが重なって、フリーランスを卒業しようと決めました。

 フリーランスのときも、日中は子供を保育園に預けていました。周囲には、「フリーランスだから預けなくても仕事ができるでしょう」と言われたりもしたのですが、実際は2歳児が家にいたら、仕事なんてとてもできません。ずっと、「構って構って」となりますから。そのあたりの葛藤もありましたね。