ITを活用した教育サービスを運営するスタディプラス。そのCFO(最高財務責任者)を務める中島花絵氏は、大手監査法人からIT企業に転身した経歴を持つ。ITベンチャーへの転職はリスクと思われがちだが、中島氏はむしろ安全な選択だと話す。

(聞き手は八木 玲子=日経 xTECH)

CFOとして、どんな仕事をしていますか。

 「CFO」という名称は一般的になってきていますが、実際に何をするかは会社ごとに様々だと思います。当社は常勤の取締役3人で役割分担しているのですが、営業やエンジニアといった“攻め”の部門が働きやすい環境を作るためにどうすべきかという部分を、私が担当しています。財務や会計はもちろん、管理部長という立場でガバナンスや人事、総務、法務なども見ています。

 ただ、求められる役割は日々変わっています。私が当社に入社したのは2018年1月なのですが、最初に手掛けたのは資金調達でした。4月末に、第三者割当増資によって5億円の追加調達をしました。調達した資金を何に使うかというと採用だったので、次は採用担当になりました。そうしたらオフィスが狭くなってきたので引っ越し担当として物件探しをして。誰がやるか分からないことは全て管理部門の仕事、といってもいいかもしれません。

スタディプラス 取締役CFO/管理部部長 中島花絵氏
(撮影:菊池 くらげ、以下同じ)
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CFOになる前の仕事は?

 社会人のスタートは、監査法人でした。大学在学中に、公認会計士の資格を取得しました。

なぜ会計士になろうと思ったのですか。

 大学に進学して就職活動を具体的に意識し始めたときに、「人生で初めて、面接で自分の価値を測られるのだ」と思いました。それはナンセンスじゃないか、と感じたのです。それまでは勉強をしてテストで点数を取れれば合格できたのに、就職のときに突然やり方が変わるなんて、と。

 そんな中で頭に浮かんだのが、会計士でした。当時は会計士資格を取れば、ほぼ確実に4大監査法人に入社できました。会計士という仕事自体は高校生のときに知って、何となく心に引っかかっていた。会計士資格を取れば、今までと同じ方法で就職が決められる。これは自分にとって有利な戦い方なのではないかと感じたわけです。

 働く意味について、はっきりとした答えが出せなかったということもありました。私は1981年生まれなのですが、この世代はバブルを反面教師にして育てられたと思っています。大学でも、「もう成長しない日本の中でどう生きていくか」をひたすら考えさせられましたが、自分の中で全然イメージができなかった。

 ではどうキャリアを積んでいくかを考えたときに、会計士は1つのステップになると思いました。自分が本当にやりたいことを選ぶ前に、いろんな企業を外から見て実力を付けられるのは良いだろう、と。それで勉強してなんとか試験に合格して、あずさ監査法人に入社しました。

監査法人での仕事はどうでしたか。

 入ってすぐ、大規模顧客の担当に配属されました。大人数で、1社の財務諸表の各項目を分担します。例えば売掛金だけを見るとか、引当金だけを見るとか、細かくて。

 私は会計士の勉強をする中で、財務諸表は「経営者の主張」だと教わってきました。財務諸表は記録ではなくて、小説と同じように表現の1つ。会社の実態は同じでも、経営者が今後何をしていきたいか、各事業をどう見ているかによって、財務諸表の内容は変わります。経営者の主張や思いに触れられることに魅力を感じていたのですが、引当金だけ見ていても読み取れない。