現在、東京大学本郷キャンパスの歴史的な校舎群には、コールテン鋼の屋上階が増築され、昔ながらの風格あるキャンパスの雰囲気を残しながらも、新陳代謝を繰り返している。その最初のモデルケースとなったのが、東京大学工学部6号館の屋上増築(1975年竣工)。香山壽夫氏の設計だ。今もキャンパスの景観に寄与している先駆的リノベーションだが、当時の石油ショックの最中にあっては、失敗もあったという。(全3回のうちの第3回)

 九州芸術工科大学のキャンパス(1970年)が完成してしばらくすると、香山壽夫氏は母校・東京大学に赴任することになった。

 東京大学に赴任してから、最初に設計した仕事が工学部6号館などの屋上増築でした。

 僕は、アメリカやヨーロッパの建築を見て回って、周囲の建物との連続性が面白いと思っていました。日本では、むしろほかの建物と違って際立っていることが重要だと思っていましたから、ルイス・カーンなどの建物を見て、周囲と連続していることに驚き、発見がありました。

 そのなかで、東大キャンパスの増築という話があったので、そこでぜひ実践したいと思いました。

 当時、経済成長の真っただ中にあって、そのときの東大の主流の意見は、手狭な本郷から、幕張か立川などの郊外にキャンパスを移すというものでした。しかし、ハーバード大学やペンシルベニア大学なども古い都市の中にあって、手狭だけれども、歴史ある大学の風格を持っている。それはケンブリッジ大学やオックスフォード大学なども同じで、東大がその道を踏み外そうとしていることに、僕は反対でした。

 そのとき、東大には建築史家の稲垣栄三先生がいて、同じように移転せずに昔ながらのキャンパスを維持することを、主張されていた。その稲垣先生から、「サポートするから、1層増築する案をつくってみませんか」と言われたんです。もちろん、元の建物のまま使い続けられればよいのですが、キャンパスを改革しようとしている先生たちは、面積が増えないと納得しませんから、増築することになりました。

香山氏が描いた東京大学本郷キャンパスの「屋上増築」のドローイング(写真:香山壽夫建築研究所)
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香山氏が設計した東京大学本郷キャンパスの「屋上増築」の外観(写真:香山壽夫建築研究所)
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