ドイツ西部に位置するケルンでは、最盛期に6000人以上の社員を抱えた保険会社ゲアリング(Gerling)が市内の中心地に社屋を構えていた。2006年のM&A(合併・買収)後、1950年に完成した本社ビルを中心に、4.6haのエリア全体に対する再開発のコンセプトが作成された。エリアの核となる15階建て鉄骨造の本社ビルは、エリアコンセプトの作成も担当したKister Scheithauer Gross(ksg)建築事務所のJohannes Kister教授が設計した。改修に際し、構造体の補強、耐火、断熱のためにスケルトン化し、マンションに生まれ変わった。

改修後の旧ゲアリング本社ビル(写真:永井 宏治)
[画像のクリックで拡大表示]

 築60年を超える高層ビルを改修することになったのは、エリアとビルに課されている景観保護が最大の理由だ。建築業界からの廃棄物を減らす目的で、既存建築物や建材を再利用する必要もあった。

 戦後復興や高度経済成長期の土地不足に対する解決策として建設したビルは、アルベルト・シュペーアの弟子が多く設計に関わった。当時は、その直線的かつ左右対称なデザインが「ナチス建築を連想させる」と批判を浴びたが、戦後の建築文化を反映したアイデンティティーとして保護の対象となった。

 具体的な保護対象となる貝殻石灰岩をベースとしたファサードパネルは、保存状態が良いとはいえメンテナンスコストが高くついていることが問題になった。また、ファサードパネルを固定する支持フレームなどにさびが出ていたことから、外装は大規模な修繕が必要となった。同時に、マンションとして改修するにあたり、構造体である鉄骨の状態が把握できないため、内装も含めて解体、スケルトン化し、鉄骨構造の補強を行うことになった。

この先は有料会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら