加賀電子は9月10日、富士通セミコンダクターの100%子会社で販社の富士通エレクトロニクスを買収すると発表した。この買収により、加賀電子は年間売上高5000億円規模となり、国内ではマクニカ・富士エレホールディングスに迫る規模の半導体商社が誕生することになる。

 半導体商社を取り巻く事業環境は厳しさを増しており、こうした経営統合は必然でもある。9月14日には、UKCホールディングスとバイテックホールディングスが2019年4月の経営統合を発表した。

 一方、今回の案件は富士通グループにとって半導体事業とは果たして何だったのか、という別の視点からの分析もできそうだ。今回は富士通の半導体部門OBとしての筆者の私見を含めて、加賀電子による富士通エレクトロニクス買収の分析を試みたい。

 半導体商社を取り巻く事業環境は、本コラムで何度か述べてきた通りである。メガ・ディストリビュータと呼ばれるArrow社やAvnet社でさえ、卸売業だけに依存する従来の事業形態の見直しを迫られている。ましてや規模の小さい日系半導体商社は、今後いかにして規模の拡大を目指すか、あるいは付加価値を認めてもらえる深さを追求するのか、といった具体策が早急に求められている(関連記事)。

 今回、富士通エレクトロニクス買収を発表した加賀電子は、2015年11月にUKCホールディングスとの経営統合を発表したものの、諸条件で合意に至らず翌年4月に統合を断念した経緯がある。加賀電子はモジュール製造やEMS事業を自前で展開するノウハウを持つ一方で、取り扱い製品のラインナップを強化したいという思いが以前から強かったようだ。その意味では、今回の買収は同社にとっては“良い買い物”。翌日の株価が上昇したことを見ても、株式市場では概ね好意的に評価されている。一方の富士通エレクトロニクスは、以下にその経緯をたどるように、そもそもなぜ富士通グループに属しているのか、今となってはよく分からない状態に陥っていた。

 富士通が半導体部門を分社したのは2008年3月。いずれ富士通の連結から外れることは当時から既定路線だった。旧三洋半導体やリコー電子デバイス、旧エスアイアイ・セミコンダクタ(現エイブリック)などの例を見ても、半導体部門の分社は基本的に「親会社の連結から外れる」ことを目的としている。ソニーの半導体部門の分社(ソニーセミコンダクタソリューションズ)がほぼ唯一の例外といえるかもしれない。

 富士通セミコンダクターは現在も、富士通の100%子会社である。だが、富士通ブランドの製品としては、メモリ製品を年間100億円程度出荷しているにとどまる。ファウンドリー(半導体受託製造)事業は1000億円を超える売り上げ規模があるものの、会津若松工場が米ON Semiconductor社、三重工場が台湾UMCにそれぞれ売却されることが決定している。これに伴い、ファウンドリー事業も譲渡先に移管されることになる。

 つまり、富士通セミコンダクターは売上高100億円規模のファブレスメモリメーカーに近い形になりつつある。その子会社である富士通エレクトロニクスにいかなる未来が描けるのか、以前から問われていた。富士通ブランドの半導体製品をほとんど持たない状況で、富士通グループの一員としてどのような拡販戦略を立てられるというのだろう。

 日系の独立系半導体商社として1、2位を争う売り上げ規模で再出発できることを考えれば、加賀電子に買収されることは、富士通エレクトロニクスにとってはむしろ望ましい結論かもしれない。以降では、富士通が半導体部門を分社してからの10年間を振り返ってみたい。

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