日本には、世界の中で強い競争力を持つ素材メーカーがたくさんある。しかも、おしなべて長い歴史を誇っている。これは、新しい素材を開発するための経営戦略、組織、人事制度、そして文化ががっちりと定まっており、新興企業ではその強みに対抗することができないほどの強い経営基盤を構成しているということを示しているのではないか。しかし、マテリアルズインフォマティクス(MI)の活用が広がり、既存のビジネス手法に固執すると、これまでの強みが明日の弱みに転じる可能性すら出てきている。

 ビジネスに及ぼすMIの影響は、素材ビジネスだけにとどまるわけではないだろう。例えば、電子デバイス。その技術の進化には、構造(微細化も含む)の革新による性能向上と、素材の革新による性能向上という2つの基軸がある。このうち、Mooreの法則に代表されるように、急速な進化を支えてきたのは構造の革新による性能向上の方だ。それはなぜか。素材の革新には偶発的要素が多く、継続的な進化の見込みが困難であることがその一因であろう。こうした状況が、MIの活用で一変する。

 MIの活用が成果を大きく左右する時代に突入しつつある素材産業で、ビジネスの競争力を維持・強化していくための方策について議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、慶應義塾大学の田口眞男氏である。同氏は、MI時代の素材開発が、電子産業などのビジネスに与えるインパクトを考察した。さらに、日本の素材メーカーに、異業種との開発競争への備えを急ぐよう訴えている。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員
田口 眞男(たぐち まさお) 1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。メモリーセル、高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2017年4月より同大学の先端科学技術研究センター研究員。技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。
【質問1】マテリアルズインフォマティクスを活用した新素材開発が進むと、電子産業や半導体産業にはどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】標的型材料開発の時代になるが、標的をいかに見つけるか、そしてどうビジネスに結び付けるかの問題が顕在化する
【質問2】マテリアルズインフォマティクス時代には、どのような技術・特徴を備えた素材メーカーの競争力が高まると思われますか?
【回答】材料物理に強く、SoCから場合によっては独自コンピューターまで開発できるメーカー
【質問3】マテリアルズインフォマティクス時代、日本の素材メーカーのビジネス環境は、どのように変化すると思われますか?
【回答】異分野からの参入も予想され、知的財産戦略が重要になるだろう

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