記事構成役(伊藤)は、学生時代に材料科学を専攻していた。新材料の開発には、出合いや狩猟のような偶発的要素がつきもので、どんなに綿密に計算や仮説立案をしても、成果が算盤(そろばん)ずくで得られるような世界ではないことを痛感した。このため、決まった期限の中で成果が求められる卒業研究などでは、迫り来る締め切りが近づくにつれてひやひやしながら研究に取り組んだものだ。

 ビジネスとして新材料を開発する素材メーカーも、そうした開発方法に大きな違いはない。素材メーカーの中には、研究者が成果を求めすぎて失敗を恐れて大胆な挑戦をしなくなるのを避けるため、加点方式の人事評価制度を導入しているところが複数ある。ただし、そんな材料開発のシーンは、マテリアルズインフォマティックス(MI)の活用で大きく変わりつつある。より多くのデータを収集し、情報処理機材に莫大な設備投資をした企業が大きな成果を上げる可能性が高まるからだ。素材開発をビジネスとして営む素材メーカーは、ビジネスモデルや仕事の進め方の大胆な刷新が求められることになるだろう。

 MIの活用が成果を大きく左右する時代に突入しつつある素材産業で、ビジネスの競争力を維持・強化していくための方策について議論している今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は、技術経営(MOT)を専門とする立命館アジア太平洋大学の中田行彦氏である。同氏は、MI時代に素材メーカーの競争力を大きく左右する要因について論じた。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
中⽥ ⾏彦(なかた ゆきひこ)
⽴命館アジア太平洋⼤学 名誉教授
中⽥ ⾏彦(なかた ゆきひこ) 神⼾⼤学⼤学院卒業後、シャープに⼊社。以降、33年間勤務。液晶の研究開発に約12年、太陽電池の研究開発に約18年、その間、3年間、⽶国のシャープアメリカ研究所など⽶国勤務。2004年から⽴命館アジア太平洋⼤学の教授として、技術経営を教育・研究。2009年10⽉から2010年3⽉まで、⽶国スタンフォード⼤学客員教授。2015年7⽉から2018年6⽉まで、⽇本MOT学会企画委員⻑。2017年から⽴命館アジア太平洋⼤学 名誉教授・客員教授。京都在住。
【質問1】マテリアルズインフォマティクスを活用した新素材開発が進むと、電子産業や半導体産業にはどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】全産業でイノベーションの速度が上がり、企業間の競争が激しくなると共に、顧客はその成果を享受しやすくなる
【質問2】マテリアルズインフォマティクス時代には、どのような技術・特徴を備えた素材メーカーの競争力が高まると思われますか?
【回答】量子コンピューターとAI人材を獲得した国と企業が、素材産業を含む全産業で世界制覇する
【質問3】マテリアルズインフォマティクス時代、日本の素材メーカーのビジネス環境は、どのように変化すると思われますか?
【回答】グローバル競争に巻き込まれ、厳しい生き残り競争に勝ち抜く必要に迫られる

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