2019年のノーベル化学賞を旭化成 名誉フェローの吉野 彰氏が受賞した。リチウムイオン2次電池の発明につながる同氏の業績は、まさに日本の国際競争力を押し上げる源泉となったものだ。近年、多くの日本人がノーベル賞を受賞するようになった。平成の30年間の受賞者数は、実に19人にも達した。しかし、その一方で、「受賞者を大量輩出する状況が長く続くと思ったら大間違い」という意見も度々聞くようになった。

 その兆しは、既に統計に表れている。文部科学白書によると、日本の科学技術分野での論文数は2002年ごろから減り始めた。論文数だけでなく、質の低下はさらに深刻とする指摘もある。論文の質を表す指標である被引用数トップ10%論文数やトップ1%論文数は、双方ともほぼすべての研究分野で順位を下げている。その一方で中国の躍進はすさまじく、2015年時点で米国に肉薄する第2位となり、日本の約4倍の論文を出し、トップ10%論文数の順位に関しても、すべての分野で日本を上回っている。

 科学技術の国際競争力低下は、産業競争力を維持強化するうえで取り返しのつかない事態を招くような気がする。今回のテクノ大喜利では、科学技術の研究での競争力低下の波及効果と打開策や対応策について議論した。最初の回答者は、アーサー・ディ・リトル・ジャパンの三ツ谷翔太氏である。同氏は、歴史的に科学技術の開発の目的が3段階で変わってきていることを指摘。これから日本が、時代の要請に応える科学技術の成果を上げていくためには、知の異分野連携を推し進めていくことが重要になることを指摘している。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
三ツ谷 翔太(みつや しょうた)
アーサー・ディ・リトル・ジャパン パートナー
三ツ谷 翔太(みつや しょうた) 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・ディ・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。GAFAに代表されるグローバルプラットフォーマーが独占的地位を得る時代から、自律分散型の企業モデルが息を吹き返す時代への移行を見通した、フラグメント化する世界 ーGAFAの先へーを日経BP社から出版(共著)。
【質問1】そもそも、科学技術研究の国際競争力が落ちると、どのような不都合があると思われますか?
【回答】国際競争力の議論は本質でない。重要なことは科学技術の役割の進化
【質問2】もしもあなたが文部科学大臣だったら、科学技術研究の国際競争力を高めるため、真っ先にどのような施策を打ちますか?
【回答】大学を知の異分野連携の場として再定義する
【質問3】あなたの子どもが学者になりたいと言ったとします。どのようなアドバイスをしますか?
【回答】学問分野を超えて未来社会を描く「想像力」を持ち続けること

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