半導体チップの製造に用いる材料と製造装置は、ハイテク中のハイテクであり、日本企業の競争力が極めて高い。海外企業にとっては、代替が利かない日本の特産品だといえる。だからこそ、真っ先に輸出管理強化の対象となったわけであろう。ただし、日本企業のシェアが高いことが、すなわち韓国が日本からの輸出に依存しきっていることを意味しているわけではない。半導体生産のグローバル化によって、日本企業が輸出管理の該当品目を、海外生産している例が意外と多くあるからだ。

 今回の韓国に対する輸出管理強化の影響で、日本の半導体産業にとっての最大の関心事は、虎の子産業である材料と製造装置の国際競争力が維持できるかという点だ。大口顧客への供給ができなくなれば、当然、業績は悪化し、将来に向けた投資もできなくなる。今回の措置をきっかけに、韓国のみならず、半導体産業を保有するあらゆる国や地域で、自国で材料や製造装置の調達が可能な体制を整えようとする機運が高まる可能性がある。日本の材料・製造装置メーカーも、当然、自衛策を取ることだろう。

 韓国への輸出管理の強化による影響を、短期的視野と長期的視野の両面から議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。同氏は、半導体とディスプレーのサプライチェーンの実際を、つぶさにまとめた。そのうえで、今回の輸出管理強化の効果を見定め、日本の材料・製造装置業界への影響を考察した。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし) 大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society(ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経 xTECHなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023」(日経BP)、「表面・界面技術ハンドブック」(NTS社)、「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】韓国への半導体、ディスプレー材料の輸出管理強化で、短期的にはどのような影響が出ると思われますか?
【回答】経産省が輸出管理の恣意的運用をしなければ、韓国企業に影響なし。フッ化水素の輸出許可が遅れれば、世界規模で顧客に影響が及ぶ。日本の材料メーカーは、既に実害があり、さらに書類作成の煩雑化で業績の低下や不安定化が起きる
【質問2】サプライチェーンや業界勢力図などに、長期的にどのような影響が出ると思われますか?
【回答】韓国が日本以外からの材料調達と材料と製造装置の国産化を促進、それによる日本の材料・装置産業の競争力低下。日本企業の韓国や中国への製造移管による日本国内製造業の空洞化
【質問3】当事国である日本と韓国以外の国や地域の企業に、どのような利害が及ぶ可能性があると思われますか?
【回答】海外材料サプライヤーにビジネスチャンス。中国での半導体材料および製造装置の自給自足体制の促進

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