既にIT業界では、中国発の技術革新やイノベーションが生まれているように見える。中国テンセント(騰訊、Tencent)の「WeChat Pay」や中国アリババ(阿里巴巴、Alibaba Group)の「Alipay」など中国でいち早く普及したQRコード決済は、FaliCaなど専用端末を使った決済手法が普及している日本でも広がりつつある。また、中国DJIがドローンのシェア7割を占めたのは、同社の製品が安かったからではなく、圧倒的高性能で欧米企業に差をつけたからだ。

 ただし、中国で生まれた技術革新やイノベーションのすべてが、欧米を含む世界中の国や地域で使われるかと言えば、そう簡単ではないかもしれない。たとえどんなに優れた技術革新、イノベーションが生まれても、個人情報保護の観点から、あるいは安全保障上の理由からといったさまざまな要因によって、その利用を拒まれることもあるだろう。

 米中のハイテク覇権争いを考えるうえで注目できる点は、中国発の技術革新やイノベーションは、たとえ欧米が利用を拒否したとしても、巨大市場の中国の中で独自の発展を遂げる可能性があることだ。これが日本発の技術やビジネスモデルだったら、「ガラパゴス」と揶揄(やゆ)されてたちまち淘汰されてしまう独自路線も、中国発のものならばオーストラリア大陸級の安定した独自生態系を維持できる可能性がある。ただし、かつて日本の携帯電話機メーカーは、世界一の技術を持ちながら、国内市場に安住して世界進出の機会を失った。その10倍以上の規模の市場が目前にある中国企業は、果たして世界を目指す意志があるのだろうか。

 米国こそが技術革新やイノベーションの唯一の発信源だった時代が終わり、米中2極体制に移行する可能性について議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者はGrossbergの大山 聡氏である。同氏は中国発の技術革新やイノベーションが、世界を席巻する可能性について論じている。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
大山 聡(おおやま さとる) 1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年よりIHS Markitで、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。2017年9月に同社を退社し、同年10月からコンサルティング会社Grossberg合同会社に専任。
【質問1】電子産業に技術革新やイノベーションを生み出す場として、米国が中国よりも優れている点は何だと思われますか?
【回答】世界中の優れた研究者や技術者を集められる環境を持っていること
【質問2】逆に、中国が米国よりも優れている点は何だと思われますか?
【回答】直面する問題や課題への対策を立てる実行力
【質問3】米国だけでなく、中国からも電子産業における技術革新やイノベーションが多発する未来に、現実味を感じますか?
【回答】中国発のイノベーションが世界に広がるとは限らない

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