食料自給率を高く維持することの重要性を説く際に、安全保障上の理由が必ず挙げられる。兵糧攻めにあったら、食料を自給できない国はすぐに負けてしまう。要するに、腹が減っては戦はできないということだ。しかし、現在の農業は必ずしも高収益産業とはいえず、そこに注力して戦略的に自給率を上げることは思いのほか難しい。

 ハイテク産業では、機器や半導体の製造は、ちょうど全産業の中における農業と同等のポジションにある。高収益を上げたいのならば、GAFAがやっているようなプラットフォームビジネスや、米エヌビディア(NVIDIA)や米クアルコム(Qualcomm)がやっているようなファブレス半導体メーカーになった方が合理的だ。だからといって、無邪気に製品の製造のすべてを他国に任せてしまったら、自給率が問われるような局面で破綻してしまうことは自明だ。ところが、米国のハイテク企業は今、製品の製造の多くを、中国と台湾の企業に委託している。

 台湾の鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry)董事長 兼 総経理の郭台銘(テリー・ゴウ)氏が、台湾の総統候補選びの予備選挙に出馬表明した。電子産業のど真ん中にいる企業のカリスマが、ハイテク覇権を競う両大国がせめぎ合う戦場の重要地域のトップに就くことで何が起こり得るのか議論している今回のテクノ大喜利。3番目の回答者は、慶應義塾大学の田口眞男氏である。同氏は、米中ハイテク覇権争いの構図をつぶさに分析し、郭台銘氏が台湾の総統になった際に手中にする影響力と、同時に抱えることになるジレンマを指摘した。

(記事構成は、伊藤 元昭=エンライト
田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員
田口 眞男(たぐち まさお) 1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。メモリーセル、高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2017年4月より同大学の先端科学技術研究センター研究員。技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。
【質問1】仮に郭台銘氏が台湾総統になったとしたら、電子業界にどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】当面影響は無いが長い目で見れば中国次第でアメリカ同盟国の電子業界が苦境に
【質問2】郭台銘氏の台湾総統就任によって、米中貿易摩擦行方にどのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】貿易摩擦に伴う制裁が効きにくくなるだろう
【質問3】鴻海傘下のシャープ、また鴻海と取引がある日本企業には、どのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】中国経済ブロックが完成しない限り影響は大きくない

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