移動体通信網が先進国と途上国を問わず世界中に張り巡らされ、移動体通信サービスが現在のようなビッグビジネスになったのはなぜか。それは、ヒトとヒトがコミュニケーションするための必須アイテムになったからだろう。約45億人もの利用者がいるからこそ、高度な移動体通信網を構築、運用することができている。

 イリジウムという1998年に開始された衛星携帯電話サービスがある。66機の周回衛星を経由して、イリジウム端末同士なら、地上の通信網を経由することなく衛星と端末もしくは衛星間だけで通信するしくみのものだ。計画当初は77機の衛星を活用することが想定されていたため、原子番号77のイリジウムという名称がついた。エベレストの山頂でも、太平洋の真ん中でも、世界中どこでも圏外ゼロ(北朝鮮では利用できない)の恐るべきスペックを持つ移動体通信網である。アプリケーションは通話が中心で、2.4kbpsのデータ通信やSNSの送受信もできる。ただし、サービス開始から約20年経ったが、一般消費者が使う移動体通信網のような目立った技術開発や継続的な大規模投資は行われていない。理由は、利用者が少ないからだ。

 特殊用途に向けた移動体通信網であるイリジウムと、仮にも一般消費者の活用も想定されている5Gを同じ土俵に乗せて論じるのはかなり無理があるだろう。しかし、用途の中心が産業用IoTといったぼんやりとしたニッチ感と、壮大なインフラ整備に要する投資の巨大さに、同じ匂いを感じるのは私だけだろうか。大きな期待と一抹のもやもやを抱えて始まる5Gが円滑に普及するための条件を論じている今回のテクノ大喜利。2番目の回答者は、服部コンサルティング インターナショナルの服部 毅氏である。同氏は、5Gの活用によって広がる応用と、4G以上の巨額に膨らむ可能性がある設備投資の回収手段の整合性に着目し、5Gの危うさとそれを克服するための視点を論じている。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
服部 毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部 毅(はっとり たけし) 大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学 留学、同 集積回路研究所客員研究員なども経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・終身名誉会員。マイナビニュースや日経xTECHなどに、グローバルな見地から半導体・ハイテク産業動向を随時執筆中。近著に「メガトレンド半導体2014-2023(日経BP社)」「表面・界面技術ハンドブック(NTS社)」「半導体・MEMSのための超臨界流体」(コロナ社)がある(共に共著)。
【質問1】5Gの普及や応用拡大に不安要因があるとすると、論点は何だと思いますか?
【回答】5G投資早期回収のためのキラーサービスが定まらず、結局は安易にスマートフォン頼みか
【質問2】5Gの利用者数増大やインフラ整備の加速の起爆剤となる応用は何だと思われますか?
【回答】コネクテッドカー(つながるクルマ)
【質問3】5Gの応用拡大と普及を促すため、通信事業者や応用サービスの事業者がすべきことは何だと思われますか?
【回答】魅力ある成長性の高い5G用途の開拓と新市場創出、垣根を超えたバリューチェーンの構築、徹底したセキュリティーとプライバシーの対策

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