新しいパソコンを買うとき、搭載されているCPUとメモリー、ストレージをチェックする人は多いことだろう。これらはパソコンの性能に大きな影響を及ぼすキーデバイスであるから当然だ。しかし、同じCPUなどを搭載しているパソコン同士でも、実際にベンチマークの結果を見ると大きく違っている例は多い。高性能デバイスを使えば、システムも高性能化するといった単純なものではないことがよく分かる。パソコンのように構造の標準化が進んだ機器でもそうなのだから、一般的な機器ではなおさらだろう。

 SiCパワーデバイスは、電気自動車などの電力利用効率を劇的に高めるキーデバイスとして期待されている。ただし、既存のSiパワーデバイスを単純に置き換えれば、その高い潜在能力を生かし切れるというものでもなかろう。Siデバイスには60年の歴史がある。だから、応用技術、利用に際しての開発インフラ、デバイスを利用して応用回路を設計する技術者の知見やスキルなど、エコシステムはすべてSiデバイス向けに最適化されていると言える。そこに異質な特性を持つSiCパワーデバイスを投入するには、使い手にも相応の技術力が求められそうだ。

 こうしたSiCパワーデバイスを取り巻く状況下で、日本企業は有利な立場にいるといえる。SiCパワーデバイスの作り手である半導体メーカーと使い手であるシステムメーカーがすぐ近くにいるからだ。三菱電機や東芝にいたっては、システムメーカーがSiCパワーデバイスを内製している。ただし、SiCパワーデバイスの事業が、自社製品の高付加価値化に向けた部品内製業、国内需要に最適化した体制のままでは、これから始まる応用の広がりと市場の拡大には対応できないのではないか。

 SiCでの競争力を日本の半導体産業が死守するための方策を議論している今回のテクノ大喜利、3番目の回答者は慶應義塾大学の田口眞男氏である。近年、インバーターを研究してきた同氏は、SiCの潜在能力を引き出して事業競争力を醸成するための方策を論じている。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
田口 眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員
田口 眞男(たぐち まさお) 1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。メモリーセル、高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリー)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授、2017年4月より同大学の先端科学技術研究センター研究員。技術開発とコンサルティングを請け負うMTElectroResearchを主宰。
【質問1】SiC関連ビジネスで、日本企業が伸ばすべき長所、解決すべき課題は何だと思われますか?
【回答】大手ユーザーにはまだ普及難に見え、しかし供給側はいずれ乱立気味に
【質問2】SiC関連ビジネスでぶっちぎりの競争力を養うため、日本の半導体産業が行うべき施策は何だと思われますか?
【回答】ウエハー共同生産
【質問3】SiC関連ビジネスで強みを継続できる状態にするため、日本の半導体産業が行っておくべき施策は何だと思われますか?
【回答】新世代のモジュール化

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