「人事とは、全従業員に向けた経営のメッセージである」。ある企業の経営者の方から、このような言葉を聞いたことがある。どのような能力を持った人がどこに配置されるのか。また、どのような実績を持つ人が抜擢されるのか。全従業員はジッと注目し、自分の身を正そうとする。だから、思慮の浅い人事をしてしまうと、間違ったメッセージが全従業員に伝わり、会社全体がガタガタになるという。優秀な経営者は、この辺りの機知が分かっていて、特定の人を動かしたことで周囲の人がどのように振る舞いを変えるかを読み、メッセージ性の高い人事を行うのだそうだ。

 企業間のM&Aもまた、極めてメッセージ性の高い行為のように感じる。M&Aに関わった企業の経営者たちだけの合議で成否が決まるわけではない。顧客やパートナー、投資家、銀行など周辺の様々な立場の人たち、そして従業員がM&Aを見守り、その意図や妥当性を考える。そして、そこに妥当性が読み取れなければ、黙って去っていくのみだろう。例え、そのM&Aに周囲には分からない深慮遠謀が秘められていたとしても、どんなに経営者が正しいと信じていても、周囲にメッセージが伝わらないM&Aの成功はおぼつかないのではないか。

 ルネサスによる米IDTの買収は効果的な買収なのか議論している今回のテクノ大喜利、3番目の回答者はGrossbergの大山 聡氏である。同氏は、今回の買収が周囲からどのように見えているのか、極めて忌憚のない意見を述べている。

(記事構成は、伊藤元昭=エンライト
大山 聡(おおやま さとる)
Grossberg 代表
大山 聡(おおやま さとる)  1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年よりIHS Markitで、半導体をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。2017年9月に同社を退社し、同年10月からコンサルティング会社Grossberg合同会社に専任。
【質問1】今回の買収によって、ルネサスは、データセンターや通信インフラの成長に付随する市場で強いビジネスを展開できると思いますか?
【回答】思わない
【質問2】今回の買収によって、現在のルネサスの主力事業である車載用マイコン事業は強化されると思いますか?
【回答】思わない
【質問3】7330億円という買収額は、予想される効果を鑑みて、妥当な額だと思いますか?
【回答】思わない

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