ドイツBMWの小型ハッチバック「1シリーズ(1 Series)」は、2004年に初代が発売され、今回の新型が3世代目となる。初代から2代目までは後輪駆動のFR車だったが、新型で前輪駆動のFFに切り替えてきた。これにより駆動方式は、同じクラスのドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen)「ゴルフ(Golf)」や同ダイムラー(Daimler)メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)「Aクラス(A-Class)」と同じになった。

新型1シリーズの下から2番目のグレードとなる118i Playに試乗
(撮影:筆者)
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 BMWは、「2シリーズ」のアクティブツアラーやグランツアラーでFFを初めて採用してきたが、主力の一台といえる小型ハッチバック車1シリーズでのFF採用は、「ミニ(MINI)」を別として初のこととなる。

 2代目までFRにこだわった理由は、何より運転の喜びを優先したためだ。一方で、後席の狭さなどはゴルフなど競合に譲る状況だった。FF化によって、そうした居住性や実用性は高まったが、懸念されたのは「駆け抜ける歓び」を標榜するBMWにとって重要な運転の楽しさの行方であろう。

 それに対し、新型1シリーズでBMWが採用したのが、操縦性においてFFの癖を出さないようにする「ARB」の採用である。ARBとは、「タイヤスリップ・コントール・システム」のドイツ語表記で、タイヤのスリップ状況を、スタビリティーコントロールを介することなくエンジンECU(電子制御ユニット)で直接感知することにより、従来に比べ約3倍の速さでエンジン出力を制御する。これによってアンダーステアを大幅に抑制し、俊敏な走りを実現するのである。

BMW車らしく、運転者中心の運転席周り
(撮影:筆者)
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 その効果を、試乗で体感した。試乗したのは、「118i Play」という車種のみであった。FF車の場合、多少なりとも前輪で車体を引っ張っている感触がある。だが、1シリーズの場合、ゆっくりした速度からアクセル全開の領域まで、前輪が加速させているという感触がまるでない。

 もちろん、FR的でもない。加速の際に後ろへ荷重移動する量も少なく、車体が水平を保ったまま、前輪でもなく後輪でもなく、まして4輪駆動でもない、これまで味わったことのない感覚で速度を上げていった。それは実に不思議な感覚であった。多分この感触をもたらしているのが、ARBの効果であろう。

 その独特な運転感覚は、FR車の醍醐味を懐かしがらせるものでもなく、FF車で思い切って加速できない不満を与えるものでもない。あたかも魔法の絨毯が空を飛ぶかのように、車体全体がほとんど荷重移動というものを覚えさせずに速度を増していく。それは新鮮な乗り味であった。

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