高齢者の安否確認と移動をサポートするような介護サービスは、現時点でも様々な企業が参入している。しかし介護保険を利用しない高齢者にとって、移動手段の選択肢は限られる。マツダは「支えあい交通サービス」が、そんな現状への解決策となるか実証実験中だ。実際に運営するNPO法人「元気むらさくぎ」に、現状での課題や問題点を尋ねた。

 「さくぎニコニコ便」を運営するNPO法人の専務理事、田村眞司氏に話を聞いた。田村氏は、かつては三次市の市議会議員まで務め、地域の振興に貢献してきた。そして今は生まれ育った作木町のために奮闘している。

「元気むらさくぎ」の専務理事、田村眞司氏。作木町の産業や雇用を守り、観光資源の開発にも力を入れる。さくぎニコニコ便はバス停までの移動が困難な高齢者向けサービスだ。
(撮影:筆者)
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 「ここはクルマが無くなった時点で住めなくなる地域です。しかし運転免許を返納した後でも住み続けられるように、この地で100歳まで暮らせるように、そのお手伝いができれば、という思いでやっています」(田村氏)

 農業機械のレンタルや収穫した農作物の加工を共同で行ったり、高齢者の入浴や宿泊施設といった地元住民の支援だけでなく、川沿いの地形を生かしたカヌー教室、道の駅ならぬ川の駅などの観光事業にも力を入れている。さくぎニコニコ便もそうした事業の一つで、実証実験に入る前、今から3年前から地元住民のためのサービスとして開始したそうだ。

「さくぎニコニコ便」のドライバーを務める篠原氏は72歳。高齢ドライバーだから、踏み間違いを起こしにくいペダルレイアウトや、ADAS(先進運転支援システム)が充実したクルマを使用することは重要だ。
(撮影:筆者)
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 しかし、運営は難しいと言う。1回300円という低料金であることと、登録者こそ100人を超えるが1日の利用者は1桁と、まだまだ売上高は望めないからだ。そのためドライバー報酬が低過ぎて、ほとんどボランティアで協力してもらっているような状態だ。

 アプリは高齢者には難しいというハードルもある。スマートフォンを利用していない高齢者は、事務局に電話で予約を申し込んでいるが、それはそれで数が増えれば作業は煩雑になり、スムーズな運営が難しくなりそうだ。

「支えあい交通サービス」実証実験での連携図。地元のタクシー会社など民業を圧迫することのないよう、自治体や事業者を巻き込んでより大きなプロジェクトへ発展させることが理想だ。
(出所:マツダ)
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