高齢者ドライバーによる運転操作ミスや逆走など、認知機能の衰えによる交通事故が多発している。「運転免許を定年制にすべきだ」という意見も出るほど、一刻も早い対策が望まれている。実際に免許を返納した場合、高齢者の生活はどうなっていくのか、広島でマツダが協力するモビリティーサービスの実証実験を取材した。

 人間、年を取れば運動能力や認知機能が衰えていくのは避けられない。現行の免許制度は、日本人がここまで長寿命、高齢化することを想定していなかった。だから免許には定年制や強制的に返納させる制度がない。ただ、高齢者が認知・運動機能の衰えで事故を起こしてからでは遅いのだ。

 一方、元気な高齢者には、引き続き動き回り、人生を楽しみ、経済活動にも関わってもらいたい。単純な定年制を設けるのではなく、身体や認知能力に応じて、運転の可否を行政が合理的に判断することが望ましい。

広島県三次市作木町の地形は谷あいに幹線道路が走り、田畑やそれを営む農家は急な斜面の途中にある。しかも冬は積雪1mが珍しくない豪雪地帯で、バス停との往復も高齢者には危険で体力的にも厳しい。(筆者撮影)
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 では免許を返納するとして、その後の生活をどう続けていくかという問題が残る。定年退職して無職となった高齢者であっても、買い物や病院への通院など移動の必要性は残る。都市部、しかも路線バスや地下鉄などが充実している地域なら問題は少ない。そのため利便性の高い地域へ引っ越しするシニア層も増えているが、慣れ親しんだ場所を離れたくない人も少なくない。農業を廃業しても、先祖代々受け継いできた地を放り出す訳にはいかないという思いの方々もいるだろう。

 そして免許の返納問題である。クルマやバイクを運転することができなくなると、自宅からバス停までたどり着くのが、大変な地域も存在するのだ。

 三次市作木町は、広島県では数少ない「豪雪地帯」。山に囲まれたほとんど平地のない地域で、標高も高いため、周辺地域とはかなり気候も変わってくるのだ。

さくぎニコニコ便で送迎する様子。SUVはフロアが高いのでステップを利用している。クルマ越しに見える眼下の住宅や道路から、いかに自宅周辺が急斜面であるか伝わるだろうか。(筆者撮影)
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 そんな地域で農業を営んできた人たちの間では、高齢化により農業も廃業し、運転免許も返納者が増えてきている。しかし農地は山の斜面を切り開いた棚田や段々畑であるだけでなく、自宅も取り付け道路が急な斜面であるため、積雪がなくても高齢者には徒歩での往復が大変そうな環境だ。

 ここでマツダは、地元NPO法人に協力する形でモビリティーサービスの実証実験をしている。そこで使われているのはSUV(多目的スポーツ車)「CX-5」だ。

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