戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、グローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では品質管理総合大会の位置づけで部・課長層を主対象にした「クオリティフォーラム2019」(2019年10月31~11月1日)を開催する。同フォーラムの開催に先立ち登壇者のインタビューを行った。今回は、京都試作ネット代表理事の鈴木滋朗氏〔最上インクス(本社京都市)代表取締役社長〕に、これまでの取り組みと今後の課題を聞いた。(聞き手は吉田 勝=日経 xTECH/日経ものづくり)

鈴木滋朗(すずき・しげあき)
京都試作ネット 代表理事、京都試作センター代表取締役社長、最上インクス 代表取締役社長。1973年京都府生まれ。1997年、最上インクス入社。2007年に同社専務取締役、2010年に同社代表取締役社長に就任。(写真:行友重治)
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 2001年にスタートした「京都試作ネット」は、私の父である先代の社長をはじめとする京都を地盤とする受託加工の中小メーカー経営者らによる勉強会が前身となっています。当時、仕事がどんどん海外へ出て行くようになり、40代くらいだった経営者らが、「このままものづくりで食べていけるのか、自分達はどうすべきか」という危機感から始めたものです。

 その勉強会では、ピーター・ドラッカーの本を読みながら、今後自分達がどうあるべきかを議論していました。しかし、勉強するだけでなく、何か自分たちで実践していかなくてはらちが明かない。そこで「試作」に自分たちの次の可能性を見いだせるのではないか、として立ち上げたのが京都試作ネットです。勉強会から脱却し、実際の案件を受注してお客さんの声を聞く。それによって自分たちがどう変化すべきかを体現していこうということになりました。

 ではなぜ、試作だったのか。理由の1つは、最先端かつ最前線に近い仕事ができるからです。常に製品開発とセットなので、試作の仕事を受ければ我々にとっても次の変化や動向をつかみとれます。量産とは違って新しい素材や新しい技術が要求されますから、自分たちの技術の革新や成長にもつながる。そこに自分たちの可能性を注入しようと、試作ネットを立ち上げたわけです。

 当初は苦労したようです。参加メンバーの企業はもともとどこも量産品の加工受託をなりわいとしていました。試作に特化した企業なんていなかったわけですから。「試作品なのですぐ欲しい」と言われても、対応できる体制になかったんです。

 しかし、立ち上げ当時から「来た仕事は基本的に断らない。必ず受ける」というのがルールでした。「学習する組織」という狙いがあったからです。自分のところが得意な仕事だけをやっていたら、結局自分たちの仕事の限界の枠組みが広がりません。ストライクゾーンばかりでなく、ボール球にもバットを振れと。

 といっても最初の2、3年はほとんど受注が取れなかったと聞いています。試作に特化した企業ネットワークなんて当時はありませんでしたし信用もない。展示会に出ても引き合いはかなり少なかったようです。

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