「SQC(Statistical Quality Control)」と略称される統計的品質管理。それは品質管理の分野において、重要な骨格だといっていい。現在、トヨタ自動車元副社長である佐々木眞一氏は若い頃、さまざまな統計的方法を幅広く学びながら品質管理のエキスパートの養成をめざす教育体系を修了し、その経験が大いに役立ったという。さらには、ビッグデータの時代ともいわれる今という時代においてのSQCやその教育の意義などについて、幅広い観点から話を聞かせていただいた。(聞き手:井上邦彦=フリーライター)

SQCについて幅広く学ぶ研修は、トヨタ自動車ではどのような人たちに求められるものでしょうか。

佐々木:トヨタでは新入社員教育からその後の段階的な階層別教育にわたって、いわゆるQC教育やTQM(総合的品質管理)の内容をさまざまな形で盛り込んでいます。日科技連の「品質管理セミナーベーシックコース」で学ぶような比較的レベルの高い知識については、必ずしも明確な基準があるわけではありませんが、基本的には役付きのあるような人たちに身につけてほしいと考えています。

佐々木 眞一氏(ささき・しんいち)
トヨタ自動車嘱託/日本科学技術連盟理事長。1970年北海道大学工学部機械工学科卒業、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。品質管理畑に長らく従事。2001年取締役、2003年常務役員、2005年専務取締役、2009年取締役副社長、2013年相談役・技監、2016年顧問・技監、2018年技監。2019年嘱託。2014年から日本科学技術連盟理事長。著書に『トヨタの自工程完結』がある。

 具体的にいえば、さまざまな職場や部門でリーダー格となってもらう主任以上の階層。特に技術系には必要だと思います。全てとはいわないまでも、そのうちのある程度は理解し、仕事でも使いこなし、また部下たちにも指導できるレベルになってもらいたい。こういった人たちがSQCの基本部分を知らないまま仕事をするようであれば、私は“無免許運転”だと何度も話してきました。

SQCの研修では、日常的に使えるようなQC七つ道具や問題解決法といった基礎的なところから、実験計画法、信頼性工学、多変量解析法にいたるまで幅広く学びます。これらを部分的に理解し、活用するというのは、どうでしょうか。

佐々木:もちろんその人が担当する業務や立場によってSQCの中で必要となるものは異なるでしょうが、私の経験からいっても幅広く学び、身につける意味は大いにあると考えています。

 むしろ懸念するのは、SQCの手法などを使うこと自体が目的化してしまう問題。手法はただ使えばいい、というものではありません。私の場合であれば、不具合や不良が生まれる原因や理屈が分からなくて、とにかく気分が悪かった。それを何とかしたい、解明したいという強い気持ちがあってSQCの手法を学び、使うようになりました。

 皆さんにも同じように、まずは何かを解決したい、深く究明したいという思いを前提にして、このSQCを活用していただきたい。そして実際に使いこなしてみれば、その利点や有り難さが実感できるはずです。ものごとには必ず意味と理屈があります。それを探ろうとするそのなかで、SQCを学んだ成果が発揮されるわけです。

 ただ、実を言えばトヨタ自動車においても、階層教育のなかでSQCの手法教育をしているにもかかわらず、実際の業務で使ったかどうかを調べてみると活用率はガクンと下がるという調査結果もあります。なぜかといえば、そうした手法を使わなくても仕事ができる、あるいは回るという仕組みがあるからです。

 また、手法を使わせようとしない上司の責任も大きいですね。結局、みんな忙しくなると早くアウトプットを出したいという気持ちになり、手法などを使わずに済ませてしまう。上司も忙しいから、その過程をきちんとフォローしていない傾向があります。

 だけどSQC的な考え方や手法を適切に使う少しの手間を惜しむことで、結果的に失敗をしたり、かえって仕事を忙しくしたりしている場面はよくあることです。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら