戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では「クオリティフォーラム2018」(2018年10月31~11月1日)を開催する。日経 xTECHは、同フォーラムの開催に先立ち、登壇者のインタビューを行った。今回は、技術情報を活用した未然防止システムなどを構築するに当たって知識を構造化する手法「SSM(Stress-Strength Model)」を提唱する構造化知識研究所代表取締役の田村泰彦氏のインタビューをお届けする。(聞き手は吉田 勝、木崎 健太郎)

 「再発防止」とは、文字通り、事故や障害、故障、業務ミスといった「“こと”が再び起きるのを防ぐ」という意味です。再発防止策を考えるに当たっては、その“こと”をどう捉えるかがとても重要です。システム障害などの結果寄りの内容を“こと”と捉えるのか、それとも設計プロセスや製造プロセスといった業務プロセスの中での、業務の問題を“こと”として捉えるのかによって、再発防止活動のアプローチが随分変わってくるからです。

 ですから、一言で再発防止活動といっても、まずそういうところから考えて、組織の具体的な課題に対応した取り組みにしていかなくてはなりません。加えて、その活動を誰が主体的にやるのか、ということもしっかり考えておくべきポイントです。

活動主体は誰なのか

田村泰彦(たむら・やすひこ)
構造化知識研究所代表取締役、博士(工学)
2002年に東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻博士課程を修了。同大大学院工学系研究科助手を経て2004年に(株)構造化知識研究所を設立。構造化知識マネジメントやトラブル未然防止に関する研究・教育を進める他、設計支援システム構築コンサルティング、品質管理関連ソフトウエア開発などを手掛ける。

 装置・システムに現れる故障などの最終事象と、その原因(メカニズム)をセットで「こういう原因でこういった事象が起きる」という“こと”を再発防止する活動は、設計や製造など各部署内の活動として一般的です。原因は、設計問題なのか、製造問題なのか、もしくはメンテナンスの問題なのか、いろいろあるわけですから、そこまでセットにすれば、再発防止活動の主体が明確で、推進もしやすいといえます。そしてこのように、活動主体をきちんと考えることによって、再発防止策がきちんと効いてきます。

 しかし効果が十分でない場合もあります。同じような原因から別の事象があちこちで起きるという事態に直面してしまいます。これは再発防止活動の主体が特定の部署に限定されてしまい、再発防止策が他部署に生かされないために生じます。再発防止する“こと”を装置などに現れる最終に近い事象ではなく、もう少し原因寄りの望ましくない事象にフォーカスし、その再発防止策を考えれば、各部署の異なる装置・システムの故障内容に依らず、様々な部署の再発防止活動に広げられます。

 実は、これは奥が深い話です。例えば、装置Aで××部ギアが破損したとします。設計における材料選定ミス、もしくは強度設計のミスだったとすると、通常、装置Aで同じような問題を起こさないために、その××部ギアの設計を見直します。可能なら標準化も進めます。これが1番ベーシックな再発防止の考え方です。

 でも、注意すべきは、そのギアの破損は、××部ギアだけではなく別装置の他のギアでも同じような設計をしたときに起きるかもしれないことです。装置ごとで最終事象は異なりますが、再発防止活動の効果をもっと得るには、原因やメカニズムを少し一般化して、さまざまなギアで再発防止できるようにしなければなりません。材質起因の事象であれば、ギアという機械要素に限らず、その材質を別の部署の異なる部品に採用する時にも再発防止すべきことかもしれません。再発防止のテーマがこのような点にある場合、活動の主体は特定の部署ではなく、部門や事業部全体または全社にする必要があります。

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