戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では「お客様第一を追究する新価値創造の強化」をテーマに、「第106回 品質管理シンポジウム」(2018年5月31~6月2日)を開催する。日経 xTECHは、同シンポジウムの開催に先立ち、登壇者のインタビュー記事を連載する。今回はトヨタ自動車専務役員の佐藤和弘氏のインタビュー(上)をお届けする。(聞き手は吉田 勝)

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佐藤和弘(さとう・かずひろ)
トヨタ自動車 専務役員 カスタマーファースト推進本部 本部長・Global Chief Quality Officer。1979年、トヨタ自動車工業(当時)に入社。2005年に品質保証部部長に就任。田原工場品質管理部部長、BRコミュニケーション改善室室長などを歴任し、2012年に常務理事およびカスタマーサービス領域領域長に、2014年に常務役員およびカスタマーファースト推進本部副本部長に就任。2016年にカスタマーファースト推進本部本部長およびGlobal Chief Quality Officerに、2017年4月に専務役員に就任し現在に至る。(写真:早川俊昭)

 社長の豊田章男は、機会あるごとに「今は100年に1度の変革期」と言っています。その変革期に当たって、右肩上がりの時代を過ごしてきた我々がどう戦っていくのかが、トヨタが直面している、そして全社員が考えなければいけない課題です。

 そのためには、先人の取り組みを振り返って、そこから学び直すことが一番大事だと最近強く感じています。テレビドラマにもなったように、トヨタの創成期のリーダーたちは、会社が潰れるかどうかという瀬戸際で、日本人の手でクルマを造るべく奮闘努力しました。あのような情熱が果たしていまの我々にあるかどうかを問い、素直に反省すべきだと思っています。

――当時とは環境が大きく異なります。

 おっしゃる通りです。しかし、当時ほどの危機に直面しているわけではないにせよ、我々を取り巻く環境や競争相手が変わってきている中で、他業種に事業の主導権を握られたり、他社に取って代わられたりしたら、トヨタは単なるクルマの“ハード”を造るだけの会社になってしまうわけです。

 そういう状況に置かれているということは、言葉を換えると“生きるか死ぬかの瀬戸際”ということであり、それが社長の言う100年に1度の変革期ということです。ということは、創業当時の人々のような思いを持って歯を食いしばって頑張らないと生き残っていけません。

トヨタだっていつ潰れるか分からない

――要は危機感ということだと思います。ただ、創業当時の危機感は、会社が潰れるかどうかという、分かりやくて共有しやすいものだった。しかし、巨大企業となった今のトヨタ自動車の中で、社員の皆さんがそれを実感するのはなかなか難しくないですか。

 思い出してください。2008年のリーマンショックの時には当社も赤字になりました。あの状態がもう少し長く続いたら、すぐに潰れると私は思っています。

 ですから先ほど述べたように、潰れるかどうかという戦いを生き抜いていかなくてはならない。今はそういう局面にいるということを、社長が何度も社員に言っているわけです。本当に私もそう思っています。だから、我々もことあるごとにミドルマネジメント層に何度も何度も危機感を説いています。浸透には時間がかかりますから。これこそ、今のトヨタで、我々経営層やミドルマネジメントがやるべきことだと考えています。

 トヨタ自動車は外から見たら安泰に見えるかもしれません。しかし、我々からすると今は先人達が敷いてきたレールの上をただ一生懸命走ってるだけといった感じです。そのレールからいつ外れるか分からないし、本当にこれからもそのレールでいいのかどうかも分からない。だからこそ、先人たちの創業間もない頃と同じような戦いを、今ここで真剣に世界を相手に戦って、生き抜いていかなくてはならないと思っています。

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