本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第121巻第1194号(2018年5月)pp.14-17に掲載された「地球を冷やす機械 1:地球規模でのエネルギーバランスの議論と方法の検討」の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)
日本機械学会は創立120 周年記念事業として「未来マップ作成プロジェクト」を立ち上げた。機械の日(毎年8月7日)・機械週間(同8月1~7日)の企画行事として、幼児から中学生までを対象にした「絵画コンテスト」の応募作品を基に、それらを実際に実現するためのステップを考察(バックキャスト)し、未来の機械工学を想像することを目的にしている。

地球を冷やす?

 「地球を冷やす機械」の作者コメントからうかがわれる意図は、地球規模での気候変動への対処にもつながる全人類的な課題解決に寄与する機械であろう。こうした理念の実現には世界的協調が不可欠で、地球規模での状況変化を生み出す取り組みは、予測できない副作用を生じる可能性もある。だが、ここではできる限り作者の意図や夢を壊さずに何ができるか考えたい。

 「地球を冷やす」という概念は、CO2をはじめ温室効果ガスの排出増による地球温暖化に対する社会の懸念を背景としたものだろう。だが、作者の意図は、より物理的・直接的に温暖化を抑制する「装置」の実現と考えられる。機械として想定されるこの「装置」のスケールは、必然的に大きくなる。本稿ではまず、このような「機械」に求められるエネルギーの量的な議論を行い、その実現方法の検討と考察を行う。

図1 お題「地球を冷やす機械」
図1 お題「地球を冷やす機械」
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全球規模で地球を冷やす:地球のエネルギーバランス

 地球の平均気温は太陽日射によるエネルギー供給と宇宙へのふく射放出のバランスで決まる。具体的には、太陽日射の29.3%が大気や地表で反射され、太陽日射総量の70.5%相当のエネルギーが赤外線ふく射として宇宙に再放射される。その差0.2%(0.68 W/m2)が地球を暖めている。この収支差がここ15年ほど目に見えて計測されるようになったことが、「地球温暖化」の根拠とされる。こうしたデータは地表面の植生などのわずかな変化で大きく変わるため、温暖化や気候変動の議論には慎重を要する。

 注目すべきは、地球の平均気温を決定づけるエネルギーバランスが太陽日射のわずか1/1000オーダーである点だろう。つまり、太陽日射の1/1000のオーダーで入射日射を反射させるか宇宙への再放射を増大できれば、「地球を冷やす」が可能になる。

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