本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第122巻第1192号(2018年3月)pp.8-11に掲載された「高エントロピー合金の特徴と鋳造合金としての実用化に向けた研究」の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

高エントロピー合金の定義、効果、特徴

 一般に高エントロピー合金は、5成分以上の構成元素をほぼ等量混合することにより混合のエントロピーを高めた固溶体(互いに溶け合い全体が均一の固相になっている)材料のことを指す。その定義については、さまざまな考え方が提唱されているが、高エントロピー合金の由来でもある「エントロピー」に基づく定義として、下記の概念が提唱されている。

 ここで、ΔSmix は正則容体(理想容体)における混合のエントロピー、R は気体定数、xi は成分i のモル分率、n は成分数である。さらにΔSmix を用いて、Medium Entropy Alloy (MEA、ΔSmix が1.0R から1.5R まで)やLow Entropy Alloy(LEA、同1.0R まで)の概念も提唱された。

 n元系合金において最もΔSmix が大きくなるのは等原子組成比合金であり、4元系等原子組成合金ではΔSmix=1.39R、5元系等原子組成合金ではΔSmix=1.61R となる。したがって、(2)式で示される基準に従った場合も、高エントロピー合金の範疇に入るのは5成分以上の多成分合金で、かつその原子組成比も等原子組成比に近いものとなる。下に、これまで開発された多様な合金における混合のエントロピーとHEA・MEA・LEAの分類を示す。

さまざまな合金(鋳造合金)のΔSmixと分類
さまざまな合金(鋳造合金)のΔSmixと分類

 高エントロピー合金は、従来型の合金と大きく異なる効果を示し、純金属・一般的な合金(LEAやMEA)・金属間化合物・アモルファス合金などとは異なる新カテゴリーの新規金属材料として、研究が急速に進んでいる。これを鋳造合金としてみた場合、[1]鋳造ままで固溶体が形成され基本的に脆くない材料が得られる、[2]鋳造ままで高強度が期待できる、[3]汎用の溶解・鋳造装置を利用した作製が可能、など卓越した特徴を持つ。

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら