2018年6月に起きた宇宙関連の出来事をまとめた「宇宙ビジネス通信」をお届けします。6月も、衛星データを使った新ビジネスの取り組みなどが多く報じられました。その中からここでは、以下の5つの出来事をピックアップします。

【1位】魚の養殖に革命を、ウミトロン初増資で9.2億円調達

 2018年6月8日、ウミトロン(UMITRON PTE. LTD.)は、産業革新機構、ベンチャーキャピタルのD4V、個人投資家の藤代真一氏、松岡剛志氏らから、総額9.2億円強の資金調達に成功したと発表しました(ウミトロンのプレスリリース)。

 ウミトロンは、元宇宙航空研究開発機構(JAXA)の藤原謙氏(CEO)が率いるベンチャー企業で、シンガポールに本社、日本に開発拠点を置いています。同社は、成長を続ける水産養殖に最新のテクノロジーを活用することで、海の持続可能な開発と魚の安全・安定供給を実現することをミッションに掲げています。今回の資金調達は、水産分野のアーリーステージの投資としては世界過去最高額(2018年6月時点)になるそうです。

 具体的には、衛星リモートセンシングデータなどの衛星データと、IoT、人工知能(AI)によるデータ解析などを活用して、水産養殖における給餌の最適化と環境負荷の軽減を実現し、水産資源の持続可能な生産環境を構築していくとのことです。広い養殖場では、魚が群れている適切な場所を見つけて餌を撒くことが必要ですが、衛星データを利用してこうした作業を効率化しようという考えです。

 ウミトロンは、IoT向け通信プラットフォーム「SORACOM」を提供するソラコムと連携し、魚の群行動の解析に基づいて給餌の量とタイミングを最適化する取り組みを実施しています。魚の餌代は高騰を続けており、養殖業では餌代の低減が最大の課題といいます。センサー情報の通信にSORACOMを導入し、データ取得を簡単に行えるシステムの構築を目指しています。

 また、愛媛県愛南町と水産養殖の発展に向けたIoT技術実証の研究契約も締結しています(ウミトロンのプレスリリース)。「UmiGarden」というウミトロンが開発した遠隔での給餌管理システムで、IoT技術を活用してインターネット経由で魚のエサやりをモニタリングするなど、エサ代の削減と漁業就労者の働き方改革に向けた実証試験を行うといいます。

UmiGardenの設置イメージ
(出所:ウミトロン)
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 ウミトロンの事業は、宇宙産業の出身者による衛星データなどを活用した新しい養殖水産業ビジネスの取り組みです。下のグラフは2012年時点の少し古いデータになりますが、水産庁によると中国、東南アジアに大きな市場が存在します。ウミトロンは、このような市場に売り込みを加速するのでしょうか。

世界の養殖業生産量の国別分類(2012年)
(水産庁のデータを元に日経 xTECHが作成)
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