人工関節に関する市場動向、政策動向、特許出願動向、研究開発動向等の調査を行い、その実態を明らかにした。
 高齢化や医療技術の進歩とともに、人工関節の市場は拡大傾向にある。人工関節の開発を支援する施策が多く策定され、開発環境は整いつつあるが十分ではない。また、出願人国籍別の出願件数では米国籍出願人の件数比率が多く、ランキング上位10者では米国籍出願人、欧州国籍出願人が各4者で、日本国籍出願人は1者のみである。そして、近年、中国籍出願人の件数増加が著しい。
 本稿では、上記以外の調査結果も紹介し、調査から判明した動向を踏まえ、今後の技術開発の方向性等に関する提言を紹介する。

 人工関節は、主に金属やセラミックス、ポリエチレン等から成り、関節の痛みの原因となっている部分を取り除く目的で、関節を人工物に置き換える人工関節置換術によって使用されます。人工関節置換術は、変形性関節症や関節リウマチなどの疾患により悪化した関節部位を取り除き、人工関節に置き換える手術になります。

 人工関節における技術の進展は、生体親和性の高い材質や精度の高い形状による人工関節の開発とともに、骨を削り人工関節に置換する人工関節置換手術が飛躍的な進歩を遂げてきました。

 人工関節の技術俯瞰図を図1に示します。技術俯瞰図は、「対象部位」、「課題」、「解決手段」の三つの部分から構成されます。人工関節の対象部位は、股関節、膝関節の他、肩関節、肘関節、手足の関節等を対象としています。課題には、機能性の向上、安全性の向上、生産性の向上、周辺要素の安全性・合併症の低減、手術支援技術、手術術式、患者QOLの向上等があります。解決手段としては、大きく「モノ」での解決と「手段・サービス」での解決の二つに分けられます。

図1【人工関節の技術俯瞰図】
[画像のクリックで拡大表示]

調査範囲について

 特許文献は、日本特許文献及び外国特許文献について、データベースにDerwent World Patents Index(キャメロット ユーケイ ビッドコ・リミテッドの登録商標)*1 を用いた検索により、日米欧中韓豪加台ASEANへの特許出願を収集しました。検索式は、所定のIPC(国際特許分類)及びキーワードにより構成し、調査期間は、2001~2016年(優先権主張年)に出願されたものとしました。特許文献は、日米欧中韓豪加台ASEANを始めとする各国への特許出願、登録特許は検索式より得られたデータベースの件数に基づいて解析を行いました。対象となる特許文献件数は35,826件でした。

 非特許文献は、論文を、データベースにScopus*2(Elsevierの登録商標)を用いた検索により、全世界の論文を収集しました。今回の調査は人工関節を調査対象にしているので、人工関節に関係する所定のキーワードにより構成された検索式により行い、調査対象の論文誌としては、国際的な主要誌に掲載された英文の論文に限定して調査しました。調査期間は、2001~2017年(発表年)としました。これらのキーワード検索で得られた総検索数は31,621件でしたが、発表件数上位70誌に限定することにより、これら雑誌に含まれる20,033件を解析の対象としました。それらを読み込み対象文献としました。

*1 Clarivate Analytics社提供の世界の50以上の特許機関発行の特許出願を採録したデータベース
*2 Elsevier社が提供する世界最大規模の書誌データベース

解析方法について

 対象特許文献は、文献ごとに明細書の読み込み調査により詳細解析を実施しました。文献ごとの読み込み調査により、本調査において調査対象とする人工関節に言及する記載のない文献を外すノイズ落としを行い、また人工関節に関することが記載されていれば、従来からの改善等の効果が記載されていなくとも調査対象にしました。

 ノイズ落とし後の特許文献数は、25,218件でした。特許文献の技術内容はあらかじめ作成した技術区分表に従って分類しました。

 複数の出願人による共同出願の場合は、筆頭出願人の国籍を用いることとしました。出願人別の出願件数をカウントする際、特に共同出願の場合は、文献に記載されているすべての出願人について出願人上位ランキングなどを作成しました。

 非特許文献については、特許文献と同様に詳細解析を実施しました。詳細解析は、非特許文献を読み込み今回の調査対象でない非特許文献はノイズとして除外しました。ノイズ落とし後の非特許文献数は、13,625件でした。技術区分別動向調査は抄録に記載されている技術内容を判別し、特許の場合と同様に技術区分表による技術区分付与を行いました。論文の国籍は、筆頭研究者の所属機関国籍としました。なお、論文の分類に際しては、人工関節に係る技術開発論文のみならず、人工関節の効果を調べた報告についても解析の対象としました。

市場環境について

 人工関節の世界市場は2011年では10,359百万ドル(対前年伸び率で9.09%)であり、2013年には11,246百万ドル(対前年伸び率で5.79%)に拡大しました。市場は6~7%ずつ伸び、2019年には16,434百万ドルに達することが予測されています(図2)

図2【人工関節の市場規模推移】
出典:平成26年度 未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業(医療機器開発支援ネットワーク構築に向けた調査・支援の試行)報告書 (経済産業省)
[画像のクリックで拡大表示]

 地域別では、米国が12,344百万ドルで44%を占め、最も大きい市場です。次いで、西ヨーロッパが27%、僅差で、日本・中国を含むアジア太平洋地域が24%で続いています(図3)

図3【人工関節・その他の人工臓器の地域別市場規模(2014年)】市場規模
出典:国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)平成27年度「販売戦略・市場拡大等に関する調査事業 2)a グローバル市場における日本企業の調査報告書(みずほ情報総研株式会社)」の4ページを基に作成
[画像のクリックで拡大表示]

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら