有機EL装置は、有機薄膜を2枚の電極ではさみ、両電極間に電界をかけることで有機材料が発光する有機EL素子を利用した装置であり、ディスプレイや照明等への幅広い応用が期待される。有機EL装置の世界市場規模は増加傾向にあり有望な市場であるが、ディスプレイの市場シェアにおいては韓国が優勢である。また、有機EL装置の出願動向では、2012年以降、中国・韓国による出願件数が増加しており、日本からの出願を上回っている。日本勢は、発光部材料では次世代材料のTADFで、用途では有機EL照明で、成膜方法では小型装置で安価に製造できる湿式法で、韓国勢・中国勢と比べ強みを有し、これらの強みを活かした技術開発が重要である。

 有機EL素子は、有機薄膜の両側に陽極と陰極を形成し、両電極間に電界をかけてキャリアを注入することで発光する積層構造の素子です。基本的な有機EL素子の断面の模式図と発光機構を図1に示します。

図1 基本的な有機EL素子の断面の模式図と発光機構
出典:各種の資料を基に作図
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 ガラスなどの基板に、透明電極を形成し、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極が積層されています。各有機層の厚みは30~50nm、陽極と陰極を含めた合計の厚みは数百nm程度です。

 陽極から注入された正孔は、正孔輸送層中の電子の詰まった軌道を移動し、陰極より注入された電子は、電子輸送層中の空の軌道を移動して、発光層に到達します。そして励起子と呼ばれる励起状態を経由し、基底状態に戻ります。その際に、エネルギー差に対応した波長の光が観測されます。なお、エネルギー差と発光波長は、E(eV)=1,240/λ(nm)の関係があります。

 1987年にイーストマン・コダック(米国)のC.W.Tangらによって、小さなバイアス電圧で発光する低分子の有機ELデバイスが報告されました。その後30年経過し、今では有機EL装置の薄さ(可撓性)・軽量・高コントラスト・高応答速度の特性をいかし、スマートフォンや大型フラットパネルテレビに搭載されて市場を拡大しているとともに、液晶ディスプレイや半導体LED照明との差異化、高付加価値化を目指して研究開発が行われています。

 本調査の調査対象を示した技術俯瞰図を図2に示します。用途・応用分野としては、ディスプレイ用を中心に、照明用やその他の用途があります。有機EL装置の要素技術としては、大きく素子用材料、素子構造、製造方法に分けて調査しました。なお、駆動回路については、素子内に作製された駆動回路の材料や構造、製造方法を調査対象とし、駆動回路に信号を送って制御する技術は調査対象外としました。

図2 有機EL装置の技術俯瞰図
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