高速大容量・低減衰の光ファイバがインフラを担う世界の情報通信量は、アジア・アフリカの情報網の整備及びIoT等により増大が予測される。既存のシングルモード・シングルコアファイバでは通信量増大への対応が困難であるが、次世代光ファイバとしてどの方式が標準となるか不明である。現在、次世代光ファイバとして1)マルチコア、2)マルチモードsup> 、さらに、3)ハイブリッド(1)+2))の3方式の研究開発が活発化している。日本勢は、マルチコアに注力し、欧米中はマルチモードに注力している。

 日本が世界に先駆けて次世代光ファイバを実用化するには、マルチコアの1)製造方法・2)接続技術の確立、さらに、最終目標のハイブリッド化を見据えマルチモードにおける3)復調処理等の周辺技術の確立が必要である。これらの技術の蓄積は既存のシングルコアに比べて未だに少なく、産学官が一丸となった研究開発が急務である。

 光ファイバとは、石英ガラス等で形成された細長い繊維状の物質であり、図1に示すような屈折率の異なるコアとクラッド、またそれらを覆うコーティングからなります。光ファイバのコアに入射した光は、全反射の原理によりファイバのコア部分に閉じ込められて伝搬していきます。適切な波長帯においては、石英ガラスによる光の散乱がほとんど発生しないため、光ファイバを用いることで、光を長距離伝送することができます。

図1 光ファイバの模式図(左)、光の伝送原理
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 光ファイバの主要用途として、光通信が挙げられます。光ファイバは少ない損失で遠方まで光を伝達できるため、情報のキャリアとしてレーザ光を用いる光通信が普及しています。光伝送の模式図を図2に示します。光通信においては、0/1で符号化された電気信号を光に変換して伝送し、信号受信先で光信号を再度電気信号に変換します(復調)。変換方法としては、光振幅の変調(光強度で0/1を表現)、位相・周波数の変調(位相・周波数変動で0/1を表現)などが利用されるほか、単一のファイバに複数偏光の光を通す多重化の技術も用いられています。信号のキャリアとして利用するレーザ光を発生させる半導体レーザの他、信号の減衰を補うアンプ、信号検出に利用するフォトディテクタなどが要素技術として用いられています。

図2 光伝送の模式図
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 光ファイバはコアの大きさ、コア数によって何通りかに分類されます。代表的な光ファイバの構造を図3に示します。大きな分類区分としては、シングルモードか、マルチモードかといった違いがあります。光ファイバ中を光が伝搬する際、ファイバの断面方向の光強度は境界条件によって特定の許された分布しかとることができず、それらをモードと呼びます。シングルモードファイバはコア径の細いファイバで、単一のモードしか伝搬できません。一方で、マルチモードファイバはコア径が太く、複数のモードでの伝搬が可能となります。

図3 代表的な光ファイバの構造
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 光通信においてはこれまでシングルモードファイバが主流でしたが、近年の伝送容量の増大に伴い、さらなる大容量化が求められつつあります。信号容量を増大させる手段として、近年は複数のコアを有するマルチコアファイバやマルチモードファイバを利用した空間多重による信号伝送が検討されています。また、マルチコアファイバのコア間の信号干渉を許容する、結合型と呼ばれる方式も注目され始めています。

 マルチコア・マルチモードファイバ以降の次世代ファイバとして、屈折率導波路型フォトニック結晶ファイバやフォトニックバンドギャップファイバが検討されています。フォトニック結晶とは、屈折率が周期的に変化するナノ構造体であり、フォトニックバンドギャップとは、フォトニック結晶の中を伝播できない電磁波の波長(周波数)領域をさします。フォトニックバンドギャップファイバにおいては、結晶欠陥を光の導波路とし、光は強力にファイバ中に閉じ込められながら伝播します。

本調査の対象とする技術領域を示す技術俯瞰図を、図4に示します。

図4. 次世代光ファイバの技術俯瞰図
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 次世代光ファイバを利用した光通信では、ファイバそのものに係る技術分野と、光通信システムの構築に必要な周辺技術分野の両方が重要となります。技術俯瞰図では、光通信の中心となるファイバを中心に、関連する周辺要素を両脇に配置し、それぞれの要素技術を記載しました。次世代光ファイバそのものに係る技術分野は特に重点をおいて調査したため、着目点として赤い枠で囲っています。また、当該技術は多様な産業に対する波及効果が想定されるため、関連する産業を光通信の模式図の右側に記載しています。

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