本記事は、応用物理学会発行の機関誌『応用物理』、第87巻、第3号に掲載された「量子ドットを用いた量子情報デバイス」の抜粋です。全文を閲覧するには応用物理学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(応用物理学会のホームページへのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(応用物理学会のホームページ内、当該記事へのリンク)。『応用物理』の最新号はこちら(各号の概要は会員登録なしで閲覧いただけます)。

まえがき

 小型・軽量で高性能の固体ガスセンサは、産業上応用のみならず、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds: VOC)ガスに起因する生活環境汚染問題(シックハウス症候群など)に対するその場計測技術として需要が増大している。ガス検出の原理は、主としてガス分子吸着によるセンシング材料の電気伝導の変化を利用する場合が多く、半導体、共役系高分子、ナノ構造材料など幅広い材料が用いられてきた。しかし、従来の固体ガスセンサ技術では、生活環境汚染モニタにおいて必要となるサブ~数ppb(partsper-billion、10億分の1)レベルの希薄な環境ガスを検出することが極めて困難であり、新たな検出原理での超高感度・小型センサ素子の開発が緊急の課題となっている。

 炭素原子の2 次元材料であるグラフェンは、その優れた電子輸送特性と極めて高い表面対体積比率から高感度センサの材料プラットフォームとして大いに注目されている1)。単層および2 層グラフェンでは、全ての炭素原子が表面原子としてガス分子の吸着に関与する。さらに、その2 次元結晶構造に起因して、グラフェンは電気ノイズが非常に小さいため2)、電子輸送特性の弱い揺らぎを計測することが可能になる。しかし、グラフェンを吸着ガス分子検出に応用する場合、通常の酸化膜上のグラフェンでは界面の欠陥や不純物の電荷の影響で、表面に吸着した分子の電荷が遮蔽(しやへい) される。またグラフェンと基板間の誘電率不整合によって、吸着電荷の静電ポテンシャルが抑制され、伝導電子に対するクーロン散乱が小さくなるという課題が存在する。

 これに対して、グラフェンを両持ち梁(はり)や片持ち梁にした状態で動作させるグラフェンナノ電子機械(Graphene Nano Electro-Mechanical: GNEM)デバイス3,4)では、前述した基板・界面の影響を除くことが可能となる。また、我々がセンサと並行して開発しているGNEMスイッチ素子5~7)をうまく利用すれば、あらかじめグラフェン梁に引っ張り応力を印加することで、大きな基板電圧印加時でもグラフェンの宙づり状態を維持できる特殊なGNEMセンサ構造を作製することができる。基板電界印加により、グラフェン表面付近でガス分子の吸着を加速し、非常に希薄なガス環境下においても高速の検出が可能となる。本稿では、CO2ガスを検出対象として、グラフェン上に物理吸着したCO2分子とグラフェンの相互作用について述べた後、GNEMデバイスを用いたCO2単分子検出の原理実験結果について紹介する。

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