本記事は、応用物理学会発行の機関誌『応用物理』、第87巻、第1号に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには応用物理学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(応用物理学会のホームページへのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(応用物理学会のホームページ内、当該記事へのリンク)『応用物理』の最新号はこちら(各号の概要は会員登録なしで閲覧いただけます)。

 情報デバイスの携帯・設置・意匠の自由度を飛躍的に拡大するフレキシブルディスプレイは、次世代表示技術の最有力候補として期待されており、今後の生活環境を革新してエレクトロニクス産業をけん引していく可能性がある。プラスチック基板を用いたフレキシブル液晶は、大画面化・高精細化技術が構築されている、製造時・動作時の安定性・信頼性に優れる、新たな製造設備が不要で量産性が高く低コストであるなどの特長を有する。筆者らは基板間隔を一定に保持するため、液晶中で合成して表面が分子配向した高分子壁により両基板を接合するスペーサ技術を提案してきた。さらに、塗布・剥離工程で極薄の透明ポリイミド基板を開発した。極薄基板と高分子壁を用いた超柔軟化デバイスは、曲率半径3mmの湾曲耐性を示した。

まえがき

 今日の電子ネットワークの発達に伴って、通信・放送・印刷・コンピュータ分野など多様な画像メディアの連携・融合が進んでおり、大きな変革期を迎えている。そのような中で、増大する情報と人の親和性を高める技術環境が求められており、いつでもどこでも電子情報を享受できるハードウェアプラットフォームの構築が望まれている。それらは、高齢化社会が本格化する中で、情報のバリアフリー化やアクセシビリティの向上にも役立つ。

 情報インフラの中でも電子ディスプレイは、人と情報を結ぶヒューマンインタフェースとして重要な役割を果たしている。これまでも、液晶などのフラットパネルディスプレイの出現が、持ち運びに便利な携帯情報端末や大画面の薄型テレビなどを出現させ、人々のライフスタイルを変革してきた。今後のイノベーションを誘発する次世代ディスプレイとしては、自由な形態で収納や持ち運びができるとともに、高度な柔軟性により人をはじめ多様な構造体に装着できるディスプレイの出現が待望されている。そもそもディスプレイは、情報コンテンツ(ソフトウェア)を伝える媒体であるため、ハードウェア自体は目立つ必要はなく、歴史的には箱から平板に、さらにフィルムへと嵩張(かさば)らない方向に変貌していく(その先にはストレッチャブル化が控えていると筆者は考えている)。

 しかし現在、液晶などの既存のフラットパネルディスプレイでは、硬くて重く割れやすいガラス基板が多用されており、柔軟性は得られない。そのため、ガラスに代わりプラスチックフィルム基板を用いたフレキシブルディスプレイが注目されている。その実現により、小型から大画面までディスプレイの携帯・設置・意匠の自由度が飛躍的に高められる。今後、センサネットワーク構想やIoT(Internet of Things)技術などにより情報提供の場が増加する中で、フレキシブルディスプレイはあらゆる生活環境での情報提示を可能にするため、エレクトロニクス産業全体をけん引するドライビングフォースになると考えられる。

 近年、フレキシブルディスプレイ方式の中でも、プラスチック基板を用いた有機EL(Electroluminescence)が注目されている。しかし、電荷の注入や発光などに用いる有機半導体とその励起状態は、酸素・水蒸気で劣化しやすいため、プラスチック基板には高度なガスバリヤ構造が求められる。そのため、保存時および発光時の安定性(寿命)や製造技術の信頼性などに課題を残している。それに対して筆者らは、フレキシブル液晶技術の優位性を早期に指摘して、これまで数々の有力な構成技術を提案してきた1,2)。液晶方式は大画面化・高精細化が容易で、低コスト化の技術・設備がすでに確立されているためである。

 本稿では、次世代フレキシブルディスプレイ技術として期待されるフレキシブル液晶の特徴・用途・技術課題を解説する。さらに筆者らは、最近、極薄プラスチック基板と高分子壁スペーサを用いて、高度な柔軟性と湾曲耐性を有する極薄液晶デバイスを開発しており、その概要についても報告する。

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