皆様、遅ればせながら令和元年おめでとうございます*1。令和の「令」というと、つい「命令」とか「令色」とかめでたくない言葉を連想してしまうのだが、ここでの令は「令嬢」とか「令息」の令で、美しいとか、優れているという意味を込めているそうだ。確かに、令和のもとになった万葉集の「初春の令月にして、気淑(よ)く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮(はい)後の香を薫らす」という歌の情景を思い浮かべると、美しい月の下でゆっくりと花を眺めその香りを楽しむ様子が伝わってくる。こんな気分で、令和の時代を過ごしたいものだ。

*1 本記事は『日経ビジネス 電子版』に2019年5月8日に公開された記事の転載です。
プジョー・シトロエン・ジャポンが3月に国内で発売した新型「プジョー508」

 ということで、令和最初のコラムはクルマの「美しさ」について考えてみたいと思う。取り上げるのは仏グループPSAの新型「プジョー508」である。この新型508の実物を、筆者は昨年秋のパリモーターショーで初めて見たのだが、そのときから美しいデザインに強い印象を受けていた。今回日本に導入されたのは4ドアセダンで、これもきれいなデザインだが、もっと好みだったのはワゴンの「508SW」のほうだ。このワゴンの日本への導入は、プジョー・シトロエン・ジャポンによれば夏頃になりそうだということだが、それまでは待てないので、今回は3月から日本での販売が始まった4ドアセダンに試乗してみた。

2018年10月のパリモーターショーで公開された新型「プジョー508SW」

もはやセダンではない

 で、ここまで便宜的に新型508を「セダン」と呼んできたものの、プジョー自身は4ドアセダンではなく「4ドアファストバック」と呼んでいる。この名称が示すとおり、前の世代の508が普通の4ドアセダンだったのに比べると、新型508はいろいろな部分が大幅に変わっている。実車を目の当たりにしてまず気づくのが「小さい」「低い」ということだ。実際に、新型508は先代よりも全高を60mm下げ、同時に全長も50mm短くしている。この結果、寸法の変化以上にコンパクトで躍動感のある印象を与えることに成功している。特に全高を下げた効果は絶大で、国内の新型車がSUV(多目的スポーツ車)やミニバンのような全高の高い車種が多い中で、非常に新鮮に映る。

 また新型508のデザインの一つのハイライトは大きく傾斜したリアピラーから車体後端に至るラインの滑らかさや、表面に刻まれた彫りの深いプレスラインにあるのだが、最大の変化は大きなテールゲートを持つハッチバック車に変貌していることだ。508といえばプジョーの最上級セダンであり、その車種をハッチバック化するというのは大きな決断だったはずだ。他にも奥行きの深いグリルや、内部の反射板に精緻な造形を施したテールランプなど、細部まで見どころの多いデザインである。

大きく傾斜したリアピラーと深いプレスラインがデザイン上の特徴(欧州仕様、写真:グループPSA)

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