本記事は、エレクトロニクス実装学会発行の機関紙「エレクトロニクス実装学会誌」Vol.21 No.2 pp.114-121に掲載された「自然界の知恵から学ぶ脈動流による電子機器冷却の新展開」の抜粋です。全文を閲覧するにはエレクトロニクス実装学会の会員登録が必要です。会員登録、当該記事の閲覧は、エレクトロニクス実装学会のホームページからお進みください。

1. はじめに

 「バイオミメティクス(生物模倣)」という言葉を工学の分野で広く耳にするようになった1)。その意味は「生体の持つ、生命を維持するために構築されている極めて特徴的かつ効率的な機構を応用して新しいものづくりを実現する」というものである。例えば、新幹線車両の構造に鳥類の特徴的な機構を応用することで性能向上を狙った事例2)は有名である。近年では蜘蛛の糸の持つ極めて優れた強度と柔軟性を衣類に応用する3)など新展開も見せている。これらはバイオと機械工学という2つの異分野が融合した新しいブレイクスルーに基づくものづくりである。異分野融合は、次世代の魅力あふれる製品に繋がる1つのヒントに成り得る。

 さて、電子機器の冷却にはファンやポンプを用いた強制対流冷却が広く使われる4)~6)。筐体容積の制限やデザイン性の担保に伴う実装制約が課される中で、計算素子の高速化に伴いますます深刻化するホットスポットからの熱拡散への対応を考えることは、広範な電子機器の設計開発において共通した、かつさらに頭を悩ませるようになったウィークポイントである。

 ここで、狭隘化した電子機器の発熱部品からの放熱問題を、図1に示すように放熱プロセスにしたがって切り分けると、(1)局部化したホットスポットからできる限り熱拡散させ、(2)拡散させた熱をヒートシンクなどから冷媒(空気や水など)へ逃がし、(3)逃がした熱を冷媒で運搬し、(4)筐体の外へ捨てる  になる。(1)には、グラファイトシートの応用7)やベーパーチャンバー8)などの熱拡散技術が開発・実用化されていたり、半導体のホットスポットや熱物性の詳細を評価9)する研究が報告されたりしている。

図1. 強制空冷の事例に関する発熱体からの伝熱プロセス
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 ファンやポンプの強制対流冷却の熱設計で検討すべきは(2)から(4)のプロセスにおける伝熱である。設計目標としては、(2)から、表面の熱伝達率の向上および伝熱面積の拡大、(3)および(4)から、熱を受け取った流体を効率よく運搬する経路の設計、かつ、よりたくさんの空気や水の供給(そのためのファンやポンプの性能確保)が肝要となる。

熱伝達率:対流熱伝達における伝熱のしやすさを表現する性能値。伝熱面の温度と流体の代表温度の温度差に対し、どれだけの熱流束を流体に伝熱できたかで定義する。単位 [W/(m2·K)]。なお、熱伝達率における流体の代表温度の定義は、対象の系やデータベースにより異なる可能性があるため、使用の際は注意を要する。

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