本記事は、電子情報通信学会発行の機関誌『電子情報通信学会誌』Vol.102 No.2 pp.134- 139に掲載された「微小光学系によるリザバーコンピューティング」の抜粋です。全文を閲覧するには電子情報通信学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(電子情報通信学会の「入会のページ」へのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(電子情報通信学会のホームページ内、当該記事へのリク)。『電子情報通信学会誌』の最新号はこちら(最新号目次へのリンク)。

1. はじめに

1.1 リザバーコンピューティングとは何か

 新しい時代は、偶然や必然に導かれて諸条件が出そろった豊かな土壌の上に、ふいに出現する。ディープラーニング技術、コンピュータの高性能化、そして豊富なデータが入手可能になったことを受け、2010年頃から「第三次AIブーム」と称される時代が到来した。

 それ以前から存在した数多くの優れた統計解析や機械学習技術に改めて「AI」の名を冠することをためらう向きもあるが、この10年ほどの技術的発展の勢いそれ自体には疑いの入れようがなく、従来のコンピュータには到底不可能であった高度な知的処理が可能となった。2011年にIBMのコンピュータWatsonが、米国の伝統的なクイズ番組「Jeopady!」で人間のクイズチャンピオンを破り話題になると、2015年にはGoogleのAlpha Goが囲碁チャンピオンを、2018年にはIBMのDebaterがディベートチャンピオンをも破った。これら大型プロジェクトよりも比較的小さな単発の知的処理だけでも、画像認識、音声認識、生成モデルなどにおいて、毎年のように記録が更新されている。いずれも最新のAIアルゴリズムによるものであり、その動作を支えるのはノイマン形と呼ばれる旧来のアーキテクチャを備えた巨大な計算サーバ群である。

 一方で、あらゆる‘もの’同士がつながるIoT(Internet of Things)時代の要請に鑑みると、計算サーバ群を含むこれらのAIシステムには幾つかの問題がある。まずはばく大な消費電力である。WatsonもAlpha Goも、いずれも100~200kWもの電力を消費し、人間の脳の消費電力約20Wと比べると1万桁程度も大きい。しかしIoTにおいて求められるのは、中央サーバで力任せの演算処理を行うのではなく、センサやカメラなど、システム末端の小形デバイス自体が簡易な知的処理を行うエッジコンピューティングと呼ばれる技術である。これら小形デバイスは、多くの場合外部からの電力供給が乏しい状況(ドローン上など)で使用されるため、消費電力の極めて低いAIシステムの搭載が求められる。もう一つの問題は、ディープラーニングやリカレントニューラルネットワークなど多くのアルゴリズムが、学習パラメータが膨大であるため、学習に多くの時間を要し、小形デバイス上での軽量な逐次学習(オンライン学習)ができないという点である。

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