イントランスHRMソリューションズ 代表取締役 竹村孝宏氏

 組織は、目標達成という成果を出すためにつくられた集団です。成果は日々の行動から生まれます。結果の質を高めるには、行動の質を高めなければなりません。

 リーダーが権力を行使したり、アメとムチを振りかざしたりして、無理やりメンバーの行動を変えさせることもできるかもしれません。でも長続きはしないでしょう。

 行動を変えるためには、思考の質を変えることが必要です。そのための方法として、コーチングなどの内発的なアプローチがあります。しかし、やる気の火種が全くない人には通用しません。「どうして私だけがやらなければならないのか」「なぜチームのために行動しなければならないのか」といった不信感を持つ人が出てきます。

 そこで重要になるのが、リーダーとメンバーとの信頼関係、すなわち関係の質を高めることなのです。

組織の成功循環モデル

 組織の成功循環モデルは、米マサチューセッツ工科大学教授のダニエル・キム氏が提唱した、組織が成果を上げたり、成功に向かって進んだりするための組織改革のフレームワークです。

 ビジネスでは、常に「結果の質」が求められます。結果の質を高めるためには、「行動の質」を変えていく必要があります。行動を変えるためには、「思考の質」に着目することが重要になります。さらに思考の質は、組織の中の「人間関係の質」が決め手となります。

 成功循環モデルには、「悪いサイクル」と「良いサイクル」があります。結果だけを求め、「結果の質」を向上させることから始めると、以下のようになります。

[1]結果の質:成果を上げようと努力するが、なかなか上がらない → 低下

[2]関係の質:組織内での対立、押し付け、命令することが多くなる → 低下

[3]思考の質:メンバーは自ら考えなくなり、受け身となって仕事がつまらなくなる → 低下

[4]行動の質:受け身で聞くだけで、自発的、積極的に行動しなくなる → 低下

[5]結果の質:さらに成果が出にくくなる → 低下

[6]関係の質:組織内での責任のなすり合いや自己防衛がまん延する → 低下

 このように、「結果の質」→「関係の質」→「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」のサイクルが低下していく悪いサイクルに陥ってしまうのです。

 これに対し、「関係の質」を高めることを起点として組織をマネジメントしていくと、以下のようになります。

[1]関係の質:相互理解を深め、互いを尊重して一緒に考える → 向上

[2]思考の質:メンバーは自分で気づきを得て、面白いと感じる → 向上

[3]行動の質:自分で考えて、自発的な行動につながる → 向上

[4]結果の質:成果が得られるようになる → 向上

[5]関係の質:成果が得られると信頼関係が高まる → 向上

[6]思考の質:さらに良いアイデアが生まれる → 向上

 このように、「関係の質」→「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」→「関係の質」のサイクルが向上する良いサイクルを生み出すことができます。

 結果ばかり求められる組織においては、結果が出せる人は居心地が良いかもしれません。でも、結果がまだ出せていない人にとっては、居心地が悪く、組織内の関係性も悪くなりがちです。

 全員が互いの能力を高め合いながら、生き生きと個性を発揮できる組織を実現することが、結果を出すことにつながります。リーダーが人間関係の質の大切さを理解せずに結果の質だけを求めていると、努力しても組織としての結果を継続的に出すことができません。

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