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イントランスHRMソリューションズ 代表取締役 竹村孝宏氏

 上司が「あいさつしろ」と口うるさいのでうんざり。報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)をきちんとしていれば問題ないはずなのに──。こんな声を聞くことがあります。

 「あいさつは何のためにするのか?」、「本当に職場であいさつすることが必要なのか?」と聞かれたら、あなたはどのように答えますか?

 現在使われている「おはよう」や「こんにちは」などのあいさつは符丁のようなもの。言葉自体の意味は不明確です。「日本文化いろは事典」によると、「おはよう」は「お早くから、ご苦労様でございます」の略で、朝から働く人に向かって言うねぎらいや気遣いの言葉だったそうです。「こんにちは」は「今日(こんにち)は、ご機嫌いかがですか」の略であり、お昼に初めて出会った人の体調や心境を気遣う声掛けだったとか。「こんばんは」は「今晩は良い晩ですね」の略だと言われています。また「さようなら」は「左様ならば」の略で、「それならば私はこれで失礼いたします」という意味だと推測されています。

あいさつは相手の存在を認めること

 あいさつは、単なる社交的、儀礼的な言葉ではありません。互いの存在を認め、関心を持っていますよと知らせるためのものです。そして、相手に敵ではないことを知らせる手段でもあります。自分があいさつしたのに相手から反応がなかったとき、多くの人が不快感を持つのは自分の存在を認めてもらえなかったと感じるからです。人は社会的な生き物なので、誰かと関わることが欠かせません。仲間づくりのためには「他人を認める」ことが必要になってきます。

 心理学者アブラハム・マズローは「欲求5段階説」の中で、人は誰でも、「人から認められたい」、「自分も自分を認めたい」という「承認欲求」があると言っています。「自分の存在理由や存在価値を確かめたい」という思いは、誰もが心の奥に持つ強い欲求なのです。

 あいさつは、相手の存在を認めていることを積極的に伝える手段であり、「あなたを認めています」「あなたとの人間関係を前向きに考えています」ということを示すサインだと言えます。

 朝や帰宅前など、職場であいさつを交わすタイミングにあいさつされないと、自分が相手から軽く見られているように感じたり存在を無視されているように感じたりしてしまうことでしょう。こうした感情が蓄積されると、相手に嫌悪感を抱くようになり、職場で安心して仕事ができなくなります。そして、ちょっとしたことでイライラして不満が爆発したりやる気を失ったりして、自分が本来持っている力を発揮できなくなるのです。

 朝、出社したら「おはよう」、帰社するときは「お疲れさま」や「失礼します」、「さようなら」と、あいさつをするたびに、相手の存在をきちんと認めていることを伝えているのです。