中村大介
高収益化支援家、弁理士

 「何か良い方法はありませんか?」

 数年前の話です。クライアント企業の次期経営者になる予定のAさんから質問を受けました。唐突にそう質問された時、私は考えがうまくまとまらず即座に答えられませんでした。

 Aさんは非常に頭脳明晰で、中途採用でありながら取締役まで上り詰めた人です。恐らく相当仕事ができる人なのだと思います。この企業は、会社の規模はさほど大きくないのですが、組織が縦割りになっており、所属外の部門や他の人の仕事は分からない、知らない、という状態になっていました。Aさんは日頃からその点を改善したいと考えていたようです。

 しかし、改善を進める際に悩みがあったようです。というのは、社長はAさんのことを全面的にバックアップしているようでしたが、取締役の自分が社長を差し置いて「トップダウン」というのはどうにもやりづらい。トップダウンで改革できたとしても、ただでさえ風通しの良くない組織なのに、さらに風通しが悪くなるのではないか、という懸念があるとのことでした。

 Aさんは悩んだあげく、当時コンサルタントとして別の案件で関わっていた私に先の質問をしてきたというわけです。

 Aさんの質問は上記の通り、ボトムアップで課題解決させる良い方法はないか? というものでした。私はそういうケースに効果的なフレームワークがあることを知っていました。また、それを他社でも実践し、効果も出していたので、Aさんの質問に即座に回答することもできました。

 しかし、質問を受けた私はどう答えたらよいか迷いました。単刀直入に効果的なフレームワークの話をすべきか、もっと本質的な話をすべきか迷ったのです。

 頭をよぎったのは、「フレームワークを伝えたとして、Aさんが今抱えている本当の課題の解決になるのだろうか」ということでした。というのは、Aさんの様子を見ていて、何か別の課題も抱えているように見えたのです。

 私にはAさんがいつもとても疲れているように見えていました。目にはクマができていて、身体全体からエネルギーや気迫を感じられませんでした。皆さんは、「気迫がないことがどんな課題なのか」と首をかしげるかもしません。

 しかし、それは立派な課題だと思います。辞書によれば、気迫というのは「他に働き掛ける精神力」という意味だそうですが、まさにそれ。Aさんには、「他に働きかける精神力」が感じられなかったのです。気迫というのは引っ張るタイプのリーダーの迫力だけを指すものではありません。全体を縁の下から支えるタイプのリーダーであっても気迫がなければ務まりません。リーダーが気迫を持っていることは、組織を良い形で運営していく上でとても大事な要素です。

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