2016年11月から始めた本コラムも今回が最終回。技術者の皆さんが経営に携わる立場になることが多くなったのを踏まえ、経営にまつわるあれこれを書いてきた。今回は最終回として、今まで述べてきた話題を整理し、「経営を担うに当たって心がけたい5つの心得」としてまとめたく。これを胸に自信を持って経営に当たっていただきたい。

[1]経営とはフリーキャッシュフローを生み出すことなり

 経営とは、株主から預かった出資金や金融機関などからの借入金を元手に、事業に必要な資産を調達し、それを使って新たなお金を生み出すことだ。お金を生み出せなければ、株主への配当はおろか、借入金も返済できないことになる。

 このお金の動きを示すのが「キャッシュフロー計算書」だ。本来の事業活動で生み出したお金を「営業キャッシュフロー」、事業のために必要な投資を「投資キャッシュフロー」といい、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いたものが、新たに生み出した自由に使えるお金「フリーキャッシュフロー」である。つまり、このフリーキャッシュフローをいかに生み出すかが経営の基本となる。

 事業価値とはその事業によって将来的に生み出されるフリーキャッシュフローを現在価値に置き換えて求める。すなわち企業の価値とは、どれだけのフリーキャッシュフローを生み出せるかで決まるのである。配当金の支払いや借入金の返済はこのフリーキャッシュフローからしていく。これを「財務キャッシュフロー」という。

 経営を担うに当たって一番重要なのは、どれだけのフリーキャッシュフローを生み出せるかということ。フリーキャッシュフローがマイナスといった事態になれば、それだけキャッシュが減る。お金を支払えなければ企業は倒産する。「お金が企業の命」を肝に銘じておきたい。

[2]まずは5Sを実践すべし

 経営を担う立場になってまず行うべきは、本当に有効なお金の使い方ができているかの確認である。出資金や借入金などで調達した資産を、お金を生み出すよう使えているかという視点で、自社の資産を現場・現物で確認するのが大切なのである。

 例えば、大量の在庫や滞留在庫にお金を使っていて、果たして新たなお金を生み出せるだろうか。在庫が多ければそれだけお金が減る。そればかりか、在庫の管理コストが増え、在庫分だけ金利も増える。それはすなわちお金が減るということ。資産調達には資本コストと呼ぶコストがかかる。資本コスト以上の利益が出せないものにお金を使っていては、お金は減っていくばかりである。

 多額の投資をして導入した設備も同様である。設備が動いていないということは、新たなキャッシュを生んでいないばかりか、資本コストに加えて、(日本では)固定資産税を払って設備を寝かせている状態である。生きた設備投資にするには、24時間365日設備を動かしてお金を生み出すのが理想。使わない設備は早期に売却すべし。そうすればキャッシュを増やせる。売却が難しければ廃棄する。簿価のある設備を廃棄すれば、その分の利益は減るものの、利益減分の法人税が減ってキャッシュは増える。

 貸借対照表(B/S)の借方の資産は、貸方で調達した資金を使って資産に換えたもの。すなわち、これが真に有効なお金の使い方になっているかをまず確認するのが大切なのだ。その確認は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)における「整理」といえる。整理とは「今の事業、今の生産に必要なものだけにすること」。真の整理ができれば、資産を圧縮してお金に換えられる。それによって、キャッシュが増えるとともにスペースの創出や資産の管理コストも削減でき、キャッシュフロー経営推進のベースが出来上がる。キャッシュフロー経営という視点では総資産利益率(ROA)の最大化が重要で、そのベースとなるのが5Sの実践なのである。

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