経営数字や現場で管理している数字の裏には、そうなるに至る物語がある。生産現場なら想定していなかった設備トラブルや品質トラブルに見舞われることがあるし、客先や市場の変化で生産品目が大きく変更になることもある。そのような事態をどう捉え、どう対応してきたかが、結果としての数字になるのだ。

物語を語れるか

 成果や決算などの報告会で「結果の数字こうなりました」と報告する際は、なぜ計画との差異が生じたかを報告するのが普通だろう。計画未達にもかかわらず、淡々と「残念ながら未達でした」と言われると、聞いている方は計画達成への意識の低さにがくぜんとするとともに、そのような人物にその仕事を任せたことを後悔するだろう。

 大切なことは、その物語を語れることだ。成り行きでこうなったというのでは、何の仕事もしなかったに等しい。環境が変化したのでこうなったというような話も言い訳に他ならない。その数値を実現するために、何に取り組み、何ができず、それに対してどんな手を打ったのか、どんな環境変化や問題が発生し、それに対してどんな対策を考えて取り組んだのか、自ら取り組んだ物語を意識して語ることが大切なのだ。

物語にこそノウハウが潜む

 実はそこの物語の中にこそ経営推進のノウハウがある。ひとつ1つ考えて取り組んだ対策は、どのような時にはどうすると数字を良くできるか、どうなるとうまくいかないかというノウハウそのものだからだ。

 例えば、原材料が計画時の想定以上に高騰したために、材料費が大幅にオーバーしてしまったと説明するだけでは経営とは言えない。今後も材料費の高騰が予測されるのであれば、当初計画に織り込んでいなくてもすぐに何かしら対策を打つ必要がある。材料そのものの見直し、設計の見直し、金型の見直し、新たな工法など、時間軸とともにどの案が大きな効果が期待できるかを検討するのである。

 金型の改造で歩留まりを向上させる案が、金型改造費以上に効果があると判断すれば、計画外の改造費がかかっても実施すべきである。計画策定時点では金型を改造してまで材料費低減することは検討していなかったとしても、費用対効果からすれば、既存品でも金型改造の検討価値があるというノウハウを得たことになる。材料費を最少化するには歩留まりを意識した金型設計が重要との認識も得られたことになる。すなわち、経営推進の過程で遭遇した問題に対して、考え実行してきたことこそがノウハウになるのだ。

 計画策定時も実現するための物語がしっかりと描けていないようでは話にならない。計画数値を策定する際は、数値を実現するためのシナリオをどれだけ明確にできたかが鍵となる(「その経営計画の数字、裏付けありますか?」の回を参照)。

 このシナリオ策定の引き出しをどれだけ持てるかは、ノウハウをどれだけ持っているかに他ならない。実際には計画したシナリオ通りにいかない事態も多いが、その時にどんな対策を考え実行できるかも、ノウハウである。着実な計画策定と、何があっても計画を達成する経営推進力の醸成は、これらの物語の中にあるノウハウをどれだけ自分のものにできたかということなのだ。

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