海外工場の経営トラブルの多くは、経営責任者が交代した時に発生する。現地事情を知らないが故にすべきことをしていなかったり、現地スタッフにとっては非常識な指示や対応をしたりしがちだ。経営方針やその進め方が変わったことへの現場の抵抗もある。

 例えば、「不安だらけの海外赴任」の回で紹介したように、タイ拠点で人事異動の説明の際に王様を引用したところ、不敬発言だとして従業員が残業を拒否し、さらにはストライキを起こす事態に至ったなどということもある。

 経営者の交代による現地メンバーとのコミュニケーション不足も、トラブルの原因となりやすい。コミュニケーション不足により、真意が伝わらなければ従業員の不安が増すのは当然のこと。とりわけ、前任者が現地語に長けていた場合はなおさらだ。

 現地メンバーのキャリア開発についても同様。交代によってそれが白紙になると、重要な人材が退職しかねない。以前も述べたが、人材育成は一朝一夕にはできない。本来、引き継ぎの重要事項だが、これが不十分なことが多い。

 かくいう、いくら優秀な人でも現地事情を熟知していなければ、最悪、操業停止も含めた混乱で業績を大きく損ねかねないのだ。

長期駐在で現地に溶け込む

 では、そうしたトラブルを避けるにはどうすればよいのか。

 大手企業では海外経験をキャリア形成の一環と位置付け、3~5年程度で責任者を交代させる場合が多いが、中堅企業では赴任10年超という人も少なくない。筆者が見たところ、うまく現地に即した経営をしているのは、そうした長期にわたってその国で仕事をしてきた人だ。

 たいてい現地語が堪能で、会議も現地語でこなしている。現地メンバーとの意思疎通も良好で、メンバーそれぞれの特質を把握し、長期視点で彼・彼女らの育成に務めている。当のメンバーも企業の成長とともに確実に上位職に就けることから、会社に愛着を持つ。

 当然、そうした経営者は現地事情にも詳しい。多くの情報入手先を持ち、労働問題や政変・自然災害などにも先手でうまく対応できる。麻薬対策や不正防止の仕組みもしっかり整えていることが多い。まさに現地事情を踏まえ、地域に根差した経営ができていると言える。

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