皆さんの会社の設計部門では、設計者が高い原価意識を持っているでしょうか。実は、原価算出自体を設計部門で実施していない企業が存在します。そうした企業は、役割と責任をしっかりと区分した上で、設計者には設計業務に集中してもらいたいという考え方なのでしょう。その考え方が間違っているわけではありません。設計者にとっては設計に集中できる良い環境だと思います。しかし、設計に集中するあまり、性能や品質のことばかり考えて原価が合わなくなる可能性があるのです。

 品質や性能に関して目標とするレベルは、市場が要求するレベルとぴったりと一致していなければなりません。目標とするレベルよりも低くなることは論外ですが、高くてもいけません。一昔前の日本製品は品質レベルが過剰だと言われていました。過剰ということは目標レベルに対して、大幅に高く、その高くなった分だけコストが増加しているはずです。今の時代、そうしたものは売れません。ニーズ製品は特にそうです

* シーズ製品の場合は、付加価値に対するコストレベルを市場で誰も認識していないため、高いか低いかという議論自体が起きないでしょう。

 話を元に戻します。要求される品質レベルに合わせた原価を導き出すためにはどのようにしたらよいでしょうか。その答えは、原価企画という仕組みを活用することです。では、原価企画とは何でしょうか。

 「原価企画=原価を企画する=原価の計画を立案すること」

 以上のようになります。すなわち、計画を立案し、実行していくことです。まさに「原価のPDCAを回していくこと」が原価企画なのです。

 さらに、原価企画の内容を研究していくと、神戸大学管理会計研究会は次のように説明しています。「原価企画とは、原価発生の源流に遡って、VE(バリューエンジニアリング:価値工学)などの手法を取り交えて、設計、開発、さらには商品企画の段階で原価をつくり込む活動である」。まさに上流部門で原価をつくり込むための活動が原価企画なのです。この活動を実施しなければ、目標とする原価に落とし込むことは難しいでしょう。

 皆さんは販売価格を算出するときに、どのような考え方で算出していますか。算出方法は2つあります。

[1]原価+利益=販売価格
[2]販売価格-利益=原価

 どちらが正しいかというと、どちらも正しい。しかし、製品特性により使うべき計算式の考え方を変えなければなりません。

 [1]の計算式を使う製品は、シーズ製品です。まだこの世の中にその製品が存在しない場合に使用する計算式となります。市場で販売価格が高いか低いか想定できないということは、その企業が積み上げた原価に利益を上乗せして販売価格を設定するしかないのです。

 その製品の付加価値が受け入れられれば販売価格が定着し、次の製品からは[2]の計算式を使っていくことになります。例えばスマートフォンです。最初に販売されたときの価格は市場が決めたのでしょうか。そうではありません。スマートフォンの前に携帯電話自体が販売されていましたが、機能や性能、顧客に与える付加価値が違い過ぎて、直接の競合製品ではありませんでした。価格が高いか安いかを誰も判断できていません。

 一方、[2]の計算式を使う製品は、ニーズ製品です。競合他社の製品が既に市場に販売されている場合、もしくは顧客のニーズが明確になっている製品の場合に使う計算式となります。

 この計算式の意味はこうです。販売価格は市場で決められています。利益も企業が存続するために必要な費用なので、こちらも決まっています。ということは、変動的な要素としては、原価しかないのです。

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