中山聡史
A&Mコンサルト 経営コンサルタント

 「社内不適合やクレーム、不具合が多くて困っています。ISOの規定や品質ツールを導入していますが、不具合が減少する見込みが一向にありません。本来の品質を維持するための方法や考え方は、一体何が正しいのでしょうか」。

 先日、クライアントからこんな質問を受けました。私は、「製品の品質の8割程度は設計で決まる」と考えています。残りの2割をものづくり部門(製造や購買、品質管理など)が担うのだと。

 では、不具合が発生したとき、企業はどのように対処しているのでしょうか。製造部門で発生した問題を設計部門にフィードバックしている企業は少ないと思います。一方、設計部門の原因で発生した不具合に関しては、解析して設計変更を行って終了です。原因や「真因」を製造部門に伝える企業はほとんどないと思います。

 本来は、不具合が発生した時点で問題解決の手順を踏みながら、対策案として次の3つを立案しなければなりません。

  • [1]暫定対策
  • [2]恒久対策
  • [3]再発防止策

 これら3つの対策案を考えて実行していくためには、設計部門とものづくり部門との連携が必要です。両部門全体が協力し合いながら各対策を実行していくのです。

 これに対し、不具合が発生した部門だけでしか対策が実行されないのは、これら3つの対策案を立案できていないからです。では、各対策案の内容について説明していきましょう。

[1]暫定対策

 暫定対策は、恒久対策を施すまでの間に暫定的に行う処置です。

 具体的には、検査する、チェックシートで確認する、教育する、気合で乗り切るなどといった処置となります。不具合が発生した際に、多くの企業がこの暫定対策で終了してしまっています。

 中でも、「教育する」ことを本対策にしてしまうケースが目立ちます。忙しい中で不具合に対する解決を“やっつけ仕事”と考えている場合、この対策で終了してしまうことがほとんどです。実は、かつて私も教育だけで乗り切ろうとしたことがあるのですが、上司に厳しく追及されて全く反論できず、再検討になったという苦い経験があります。

 また、検査やチェックシートは、あくまでも人間の力に頼った暫定処置です。2度と同じ問題が発生しないかと聞かれると、発生しないという保証はありません。不具合が発生した製品が直るだけで、他の製品に問題がないとは言い切れないのです。

 冒頭の質問にもある「品質を維持、向上できない」という企業のほとんどは、思い付きの暫定対策で終了していることが原因です。皆さん、現場を見てください。設計部門はチェックシートの枚数がふくれ上がっていませんか? 製造部門は検査人員が増加していませんか? このような状況になっている企業は、要注意です。今は品質を維持できていても、検査する人が変わってしまえば、品質も変わるかもしれません。すると、顧客が求めている品質を確保できず、不具合になってしまう危険性があります。暫定はあくまでも暫定です。恒久対策によってやめることができる対策が、暫定対策なのです。

[2]恒久対策

 恒久対策は、その製品で2度と同じ問題が発生しないようにする対策です。暫定対策では対応できなかった部分まで保証することができます。恒久対策を行うには多くの場合、製品の何かしらの構造や部品まで変更する必要があります。しかし、その内容をすぐに検証できないため、暫定対策で「処置」するのです。

 例えば、チェックシートに「過去に発生した不具合の対策を行ったか」という内容が記載されているとします。その暫定対策を織り込んでいれば、レ点を付ければOKとなります。恒久対策ではその対策内容を「標準モデル」に反映し、誰が、いつ、どのように使用したとしても、対策が織り込まれている状態にする。すると、暫定対策としてチェックシートに追加した項目を削除することが可能になります。標準モデルに対策案が織り込まれているにもかかわらず、チェックシートでもう1度確認するのはムダです。一刻も早くチェック作業をやめなければなりません。

 本来は最低限、この恒久対策まで実施しなければ、問題が解決したことにはなりません。皆さんもチェックシートに残っている過去の不具合を検証してみてください。恒久対策が講じられず、かなり長い期間チェックシートに残っている項目があるはずです。

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