中山聡史
A&Mコンサルト 経営コンサルタント

 問題の未然防止を図るために、さまざまなツールが開発されています。中でも、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)やDRBFM(Design Review Based on Failure Mode)がさまざまな業種の製造業で使用されていますが、正しく使われていないことが多いようです。そのためか、設計者のやっつけ仕事になってしまい、結果として問題の未然防止ができていないというのがよくあるパターンです。

 設計者の心の声に耳を澄ますと、「時間がなくて納期が迫っている状況で、時間がかかる『FMEAをやれ』と言われても無理だよ。とりあえず過去の資料をコピーして、少し内容を変えておけばバレないだろう」などといった言葉が聞こえてきそうです(少なくとも筆者には心当たりがあります)。

 では、なぜ問題の未然防止を図る際に、例えば故障モードなどを考えるのに時間がかかるのでしょうか。また、設計者が「やらされ感」を持つことになるのでしょうか。これらの問題を解決しなければ、いつまでたっても設計者はやらされ感を抱えたまま仕事をすることを強いられてしまいます。

[1]時間がかかるのはなぜか?

 「まずは故障モードを考えなさい」とFMEAやDRBFMでは言われています。従って、設計者は設計する際に必ず故障モードのことを考えているはずです。そうでなければ、構造的な設計はできません。仮に考えずに図面を描いたら、干渉や機構的な問題が発生して「もの」になりません。ということは、基本的な部分で不具合が起きること(製造できないことも含む)は少なく、設計者が気付いていなかったり、考えていなかったりした部分に不具合が起きるということです。

 製品にとって致命的な欠陥(企業でさまざまな定義がありますが、一般には、顧客に「安全・安心」を届けられないような欠陥)が起きなければ、小さな修正で済みますし、大きな手戻りにはつながりません。

 つまり、FMEAやDRBFMを進める際に最も重要なのは、致命的な欠陥にならないように未然防止を図ることです。

 ただし、致命的な欠陥を見つけ出すにはコツがあります。致命的な欠陥がどのようなものかと考えても、それは見つかりません。製品の「機能」を考え、その機能が欠如すると顧客にどのような影響があるかを考えるのです。その影響が大きい機能こそ、製品の重要機能なのです。重要機能とその周辺の故障モードを考え、その問題の未然防止を図ることで致命的な欠陥を避けられますし、時間も短縮できます。さらに言えば、フロントローディングの実現や設計品質の向上も可能になります。

 まずは、製品の重要機能を明確にし、「機能の欠損」から故障モードを考えて、問題の未然防止を検討してみてください。全ての内容について未然防止を図ることよりも、短時間でかつ大きな効果が生まれます。

[2]やらされ感

 一方、「やらされ感」については、設計者の考え方やその企業の風土もあり、改善はかなり難しいと思います。理想を言えば、問題の未然防止を図ることでやり直しや手戻りが少なくなる(人間が設計している以上ミスは必ずあるため、ゼロになるとは考えられない)ため、設計のリードタイムを伸ばし、製造のリードタイムを短くすることが可能なはずです。「時間をかけずに問題の未然防止を実施しなさい」というのは無理があります。ただし、あくまでも理想なので、製造のリードタイムを短縮させることはなかなか困難だと思います。

 では、実際はどのようにしたらよいのでしょうか。やらされ感が生まれる理由は2つあります。