国内でも現地化設計は必要

 さて、本題に入りましょう。「化」を省いた「現地設計」とは、現地で設計行為を成すことです。それでは、「化」を含んだ「現地化設計」とは何でしょうか。

 まず、「現地」とは、海外であると理解している設計者がいますが、それは短絡的です。現地とは、まずは「国内」のことです。複数の工場を持つ企業の場合、仮に、埼玉県に主要工場があるとしたら、他の工場は日本国内であっても、埼玉県や隣接した県ではなく、遠く離れた他県に設けるものです。これが今や企業の常識となっている「リスク分散経営」です。リスク分散の「リスク」とは、大地震や大型台風、大規模停電、伝染病などを意味します。

 日本国内であれば、設計に関してはどこの地方でもどの県でも条件は同じだと考えている設計者がいますが、修行が足らないと思います。本コラムの第35回に登場した老舗の日本料理店「大和屋」で修行してほしいと思います。

 例えば、鋼板材料のSPCCやSECC、ステンレス鋼板のSUS430やSUS304といった汎用性のある一般材料であれば、日本中のどこの地方でも簡単に入手できると思います。

 しかし、チタン合金などの合金となると、少々入手が難しくなります。最も入手に困るのは、実は樹脂です。「東レのポリアセタール(POM)の〇〇番」や、「デュポンのポリカーボネート(PC)の〇〇番」といった具合に材料を指定するので、合金よりも入手が難しくなります。

 こうした地方の事情や材料の入手性を熟知せずに無責任な材料を選択することは、設計者としては修行不足と言わざるを得ません。

 もう1つの例を挙げましょう。人間の手の指からは脂(あぶら)が出ています。これを手脂(てあぶら)といいます。手脂があるからこそ、指紋が採取できるわけです。さらに、この手脂には塩分が含まれており、この手で鋼板などの金属に触れれば、一気に錆びます。ステンレス鋼でも簡単に錆びてします。

 中には、「ゴム手袋を装着すればよいのではないか」という能天気な設計者もいますが、超精密部品は、素手で作業するものです。日本料理店と同じく、ゴム手袋やビニール手袋は装着しません。

 こうした状況も知らずに、現地化設計を考慮しない設計者がいるとしたら、それは、とても能天気な設計者です。即席麺も地方ごとにスープの味を変えて現地化設計が施されているではありませんか。つまり、そうした設計者は即席麺の企画も設計もできないということです。

 国内生産における現地化設計とは、前述の即席麺のスープ同様、各地域の顧客要望と、その生産現場の要望を収集して設計することです。少なくとも、思い込みは回避すべきでしょう。