國井 良昌
國井技術士設計事務所 所長

 次のような質問が私の事務所に寄せられました。

【質問】

 私は韓国の自動車メーカーに勤務する設計者です。先月、ある技術セミナーを受講しました。その時、講師が「現地化設計とは、現地に行って設計すること」だと説明していました。そこで、私が、「それは違うのでないでしょうか。あまりにも単純すぎませんか?」と質問したのですが、その講師は考えを曲げませんでした。「現地化設計」に関する國井先生のお考えを聞かせてください。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】

 「設計」を「生産」に変え、「化」を取り除くと「現地生産」となります。この説明ならば簡単ですね。輸出ではなく、現地に工場を建てて生産することです。

 続いて問題の「現地化設計」ですが、「化」を取り除くと「現地設計」となります。この場合は先の講師の言う通り「現地に行って設計すること」です。しかし、「現地化設計」には「化」がありますので、「現地の要望に沿った設計を施す」ことを意味します。ただし、ここで「要望」とは、通常は顧客の要望だけを考えがちですが、生産現場の要望まで含みます。この点が重要です。では、今回は「現地化設計」について取り上げます。

現地生産とノックダウン生産

 先ほど「現地生産」という単語がありました。これに似た少々ややこしい単語がありますので紹介しておきます。それは、「ノックダウン生産」です。まずは、ここから理解しましょう。

 ノックダウン生産とは、もともとはライセンス生産のことです。その代表例に、図1に示すジェット戦闘機「F-15」があります。

 自衛隊がこの戦闘機を米国から輸入しようとしても、船便では無理です。飛行して来ることもできません。なぜなら、F-15の飛行距離は約5000kmだからです。これに対し、東京とニューヨークの距離は約1万kmもあります。途中で燃料が切れて海に落下してしまいます。ちなみに、F-15の価格は1機当たり約100億円と言われています。

図1●ジェット戦闘機のF-15(イラスト作成:國井技術士設計事務所)

 従って、民需製品においてもノックダウン生産とは、全ての部品、もしくは、主要部品を諸外国から輸入し、現地で組み立てて完成品とする生産方式のことです。その代表的な商品は自動車です。完成品であるクルマを現地へ輸出すると輸送コストが高くなり、また、損傷品が発生した場合には損失費が上乗せされます。

 そこで、ばらばらの部品または、小組立体(サブアセンブリー品)を現地へ輸送して組み立てるという方式が誕生したのです。その現地とは、具体的には低賃金の新興国の場合が多く、その国の政策により、完成品よりも部品の関税を低くします。そうすることで、組み立てや完成品検査作業などの雇用を現地で生み出すことができ、完成品のコスト削減にも寄与するというわけです。