敵国に分析された零戦の弱点

 三菱重工業に勤務していた零戦の設計者である堀越二郎氏のコメントを以下に紹介します。本コラムの第29回で紹介した零戦の企画書、つまり「十二試艦上戦闘機(零戦)計画要求書」を海軍航空本部から受け取った堀越氏は次のように感想を述べています。

[1]零式艦上戦闘機の計画要求書は、当時の航空界の常識をはるかに越えた要求性能であった。
[2]この要求のうちどれか1つでもなくなれば、ずっと設計しやすくなるだろう(このままの要求性能では、設計できないという意味)。

 ここで、堀越氏の採った策は「設計思想とその優先順位」。とりわけ、優先順位を設定しました。その優先順位の第1位は、「軽量化」です。軽量化によって全ての相反する要求仕様に応えたのです。

 図2を見てみましょう。

 代表的な例が、当時は世界の常識であった、パイロットを背後の銃弾から保護するための厚さ10mmの鉄板(防弾板)を排除したことです。その上、パイロットのシートにまで多くの「穴」を開けて軽量化を追求しました。

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図2●徹底した零戦の軽量化(國井技術士設計事務所作成)

 第二次世界大戦中の1942年7月、アリューシャン列島のアクタン島に不時着した無傷の零戦は、そのまま米軍に回収され、米国本土へと搬送されました。その直後、米軍テストパイロットによってテスト飛行が行われ、技術も設計も分析されました。その結果、零戦の「設計思想とその優先順位」から、零戦に対抗する戦術を米軍が研究することができたと言われています。

 かつて、空中で零戦を発見した米軍パイロットは「ゼロファイターだ!」と叫び、逃げ帰ったと言われていましたが、この分析後、新たな戦法とそれを実現させる新鋭戦闘機によって、零戦は木の葉が舞い落ちるように撃ち落されていきました。米軍とその技術者たちは、「競合機分析」のセオリーの通りに実行したのです。

零戦の設計書を作成してみる

 は、零戦の設計書(一部)です。設計書と言っても、当事務所オリジナルの簡易設計書(DQD)を使用して表現してみました。

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表●零戦の簡易設計書(國井技術士設計事務所作成)

 が見づらい方や、もっとじっくりと閲覧したい方は、下記よりExcelファイルをダウンロードしてください。

【零式艦上戦闘機の簡易設計書(DQD)のダウンロード】
・URL:http://a-design-office.com/somesoft.html
・ソフト名:No.33:日経BPセミナー&コラム
・パスワード:bp_nik_mbclk

 さて、最後に筆者のセミナーおよび、コンサルテーション契約の企業の皆さんへのお願いです。セミナー中やコンサルテーション中に、筆者への零戦に関する質問はご遠慮ください。皆さんのご帰宅が2時間ほど遅れます。ご協力をお願いします。

 では、またお会いしましょう。