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國井 良昌=國井技術士設計事務所 所長

 次のような質問が私の事務所に寄せられました。

【質問29】
 先生はセミナーで、「日本製品は何でもありの過剰品質と多機能で、設計思想とその優先順位が設定されてない。まるでオール5を取るような優等生を育成している進学校のようです」とおっしゃっていました。第23回の「『設計書』が書けない設計者」も拝読し、これには職場でも大変ショックを受けました。そこで、「設計思想とその優先順位」、および「設計書」に関して、それはどのようなものなのか、先生の大好きな「零戦」を事例に教えてください。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答29】
 前回も書きましたが、教育の場で「零戦が大好き」と言われるとちょっと困ってしまいます。でも、分かりました。本コラムで、上記の「設計思想とその優先順位」、および「設計書」に関して解説しましょう。

 実は、前回の第29回の「零戦に学ぶ悪しき企画書とその対策」で、上記質問の「設計思想とその優先順位」の解説は終了しています。そこでは、「零式艦上戦闘機(零戦)」を事例に図1を掲載しました。

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図1●100円均一の店の灯油ポンプと零戦の「設計思想とその優先順位」

 この図1が「設計思想とその優先順位」です。理解できない場合は、第29回のコラムをもう1度、お読みください。

なぜ今回も零戦が登場するの?

 ところで、前回も今回もなぜ、零戦の設計を取り上げたのでしょうか? 前回では詳しく解説しましたが、第二次世界大戦に敗北した我が国は、米軍〔連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)〕から航空機の開発を禁じられました。

 世の中に存在する各種製品は、民需製品と軍需製品の2つに大別できます。「設計思想とその優先順位」とは、特に後者の軍需製品に色濃く反映されます。さらに、この軍需製品の中でも戦闘機や、最近であればジェット戦闘機の戦闘能力を司る重要な設計ファクターが「設計思想とその優先順位」なのです。

競合機分析とは設計思想とその優先順位を分析すること

 従って、敵国の戦闘機に打ち勝つためには、その「設計思想とその優先順位」を分析し、有利な航空戦法を練ることが常套手段となっています。逆に言えば、自国戦闘機の「設計思想とその優先順位」を探られることを最も嫌います。これを「競合機分析」と言います。

 言い換えるならば、「設計思想とその優先順位」を理解できない企業や設計者には、競合機分析はできないと断言します。別の言い方をすると、「設計思想とその優先順位」とは、設計書の中で謳(うた)う、または、主張する設計者のセンスが最も問われる設計項目です。ということは、設計書が書けない企業や設計者には競合機分析などできません。せいぜい、稚拙な「〇」「×」「△」で評価することで満足してしまうことでしょう。