古谷 賢一=ジェムコ日本経営 本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)

 2016年10月から始めて2年半続いた本コラムも、今回をもって連載を終了することとなった。今回は、これまでの連載を総括する意味で、強い工場づくりにおける「戦略性」について考えてみたい。

 工場を運営していると、必ず直面するのが「トレードオフ」だ。A工程の効率を優先するか、あるいはA工程は少し犠牲にしてもB工程の効率を優先すべきか。どちらを選択すべきかといった状態は工場内で常に付きまとう。トレードオフの関係がある状況では、検討すべき選択肢のメリットやデメリットを総合して考えた上で、最終決定を行う。

 だが、現実は厳しい。片方を優先するということは、結果として、もう片方に犠牲を強いるということだからだ。そのため、「どちらも頑張ってくれ」と双方にムリを言ったり、どちらにも害が少ない玉虫色の取り組みに終わったりすることになってないだろうか。

 工場には経営資源、すなわち「人」「もの」「カネ」、そして「情報」があり、これらには限りがある。そのため、例えば「人」を活用する場合、「誰を優先的に教育するか」といった優先順位に悩んだり、「どの人材をどの工程に優先して配置するか」といった工数配分に悩んだりする。「もの」でいえば、限られた生産設備をどの製品や顧客に割り当てるかが、「カネ」でいえば、何を優先して投資するかの優先順位付けが工場マネジメントの基本となる。

強い工場づくりのポイント

 強い工場は、経営資源の配分に対して戦略的な視点を持っている。

 どの工場も規模の差はあれど、「人」「もの」「カネ」「情報」に限りがあるという条件から逃れることはできない。ところが、工場の各部門は、自部門の成果を最大化することを考えがちだ。例えば、製造1課では「既存設備の改修による大幅な生産性の向上を図りたい」、製造2課では「古い設備の更新によって顧客からの厳しい精度要求に対応する必要がある」といった具合に、各部門からの要求がさまざまな形で上がってくる。しかし、各課が要求する通りの投資を全て実行するだけの余力はない。

 そこで求められるのが「戦略的な視点」である。

 例えば、中期的な顧客動向を踏まえた営業戦略を遂行するために、「今、X設備の更新をしなければ競争力が保てない」という状況にあるとする。その場合は、競争に勝つための投資としてX設備への投資を決断する。その一方で、別の設備の改修などは、今期はあえて我慢してもらうということが、工場の戦略的な視点である。

 戦略とは、特定の目的を達成するために向かうべき方向を示し、その実現のためのシナリオを描くことだ。言い換えると、目的を達成するために「何を取り、何を捨てるのか」を決めることでもある

 特に重要なのは、捨てる決断だ。強い工場はこの志向が強く、決してどっちつかずの玉虫色の決断はしない。メリハリの利いた決断は、競争力の強化につながる。

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