古谷 賢一=ジェムコ日本経営 本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)

 強い工場づくりを託せる次世代の工場幹部は誰を指名し、どう育成すればよいか──。今、経営者や工場トップから受ける最も多い相談はこれだ。「この人物は優秀なのか、否か」──。工場幹部候補者を選ぶための評価基準は多岐にわたるため、選定は本当に難しい。現工場長や経営者と、いつもうなりながら最善策を考えている。

 私は、工場幹部候補者を選抜する際の評価基準の1つに「課題設定力」を取り入れてほしいと思っている。今回は、この課題設定力を取り上げてみたい。現状を冷静に分析し、弱いところや足りないところを謙虚に受け止めて、何をすべきかを定める力があるかどうかがポイントだ。経験を積んだ工場幹部候補者であれば、実務実績からその能力を推し測れる。ところが、中堅・若手の工場幹部候補者に経営的な視点、あるいは俯瞰的な視点で組織の力を本質的に高めるために、今、最優先で取り組むべきことを選び出す力があるか否かを評価することは極めて難しい。

強い工場づくりのポイント

 強い工場は、次世代の工場幹部となるべき候補者の要件として、冷静かつ謙虚な人物を挙げている。取り組むべき課題を適切に設定できる力量が工場幹部には求められる。例えば、やるべきことを徹底できていないのに次のことに着手するのは、本来期待されていたはずの成果が目減りしたことに他ならない。やるべきことに欠点があるのに、それを修正せずに続行していると失敗の可能性が高まる。そして、やるべきと考えていたことが、そもそも本質的な課題ではないならば、あえて立ち止まって再考することが大切だ。実務遂行能力が優れており、組織の内外から人望もある。だが、気合と根性という「腕力」だけで実績を上げてきて、現状を冷静に見つめることができない人物は、この課題設定力に難ありということになる。

 あなたが経営者、もしくは工場トップであれば、自分の次を託す人物に問題提起することを想像してほしい。あなたの本意(解決に悩む事象)を同じ目線で悩まずに、「分かっています。既に、〇〇を実行しています、大丈夫です」と根拠もなく自信満々に答える部下と、あなたと同じ目線に立ち「分かっています、今〇〇を実行していますが、いくつか懸念事項があります。特に××への対応にはメリット、デメリットがあり…」と、実行に向けてのハードルを冷静に受け止めている部下のどちらを信用するだろうか。

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