古谷 賢一
ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)

 工場の改善には2つの方法がある。1つは、工場の能力を継続的に改善していくために地道に活動する方法。もう1つは、工場の風土を改善ではなく改革するくらいの意気込みで、大きく「舵」を切る方法だ。地道な活動の大切さは言うまでもないが、時には大鉈をふるうことも必要だろう。

 これまでベテラン作業者のスキルを頼りに「腕一本」でものづくりを行ってきた日本企業の工場の多くが今、作業者の高齢化に従い、若手へのノウハウの移行に悩んでいる。そこで、口述伝承だった作業のノウハウの伝承を人工知能(AI)に代替したり、形式知化や標準化を進めた工場にしたりする動きが見られる。こうした動きは、工場の風土が根底から変わる大きな改革の1つと言える。

 工場で大きな変革が求められるとき、誰もが危機感を持つ。それ故、関係者は課題解決と改革の成果を早く得たいと焦るものだ。例えば、それが右から左に持ち替えるといった「動作」であればすぐに変えられるだろう。だが、工場のメンバーそれぞれの思いや考えに根差した「行動」を変えることは簡単ではない。それ相応の時間が必要だ。

 にもかかわらず、目に見える変化が短期間で表れないことにいら立ち、取り組みの手をころころ変えてしまう管理者は多い。せっかく大きく「舵」を切ったにもかかわらず、新しい組織の形が動き始める前に、管理者がしびれを切らしてさまざまな手法をザッピングしてしまうと、改革は達成できない。

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強い工場づくりのポイント

 強い工場は、工場の改革には時間がかかることを知っている。まず、組織全体に改革の必要性を理解してもらわなければならないからだ。

 強い権限でトップダウン式に取り組むことを命じた場合、工場の見かけだけがある瞬間に変わることはある。だが、それは一時的なものであり、組織に根付いて本来目標とする姿を継続的に維持できるようになるにはかなりの時間を要する。工場は現状の方法を大きく変えることに抵抗する傾向があり、特にベテラン作業者がそろった「腕のある」工場ほど、その傾向は顕著だ。

 そのため、全員に現状の方法を変えるように頑張ってもらうのではなく、まずはキーパーソンとなる作業者にその必要性を認識してもらうことが大切だ。キーパーソンには、多忙な中でも改革活動に時間を割くに値するという危機感を覚えてもらうようにアプローチする。

 漠然とした改革を具現化するためには、今後の工場のあるべき姿と現状とのギャップ、あるべき姿になるための具体的なアクションプランを見せることから始めよう。同時に、短期的成果「QuickWins」を体感してもらい、工場のメンバーの改革モチベーションを維持することも重要である。こうすることで、改革という名の険しく長い道のりを走り抜けることができる。

強い工場の管理者は、「課題が現実化してから、対策に着手するのでは遅い」という考えを持っている。つまり、課題解決に必要な時間を逆算し、今、何をすべきかを考えることが、改革の成功に必須となる。

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